塾長ノート

put はなぜ「置く」だけで文が終わらないのか

目的語のあとに、必要な場所がある

英語の文型を習うとき、 第3文型は、

SVO
主語+動詞+目的語

と習う。

たとえば、

I read the book.
私はその本を読みました。
She likes music.
彼女は音楽が好きです。

のような文である。

では、 put も「〜を置く」という他動詞なのだから、

I put my bag.
私はかばんを置きました。

で文が完成するのだろうか。

日本語の「かばんを置いた」であれば、 場面によってはそれだけで十分に意味が通じる。

しかし、英語で put を 「物をある場所に置く」という意味で使うとき、

I put my bag on the chair.
私はかばんを椅子の上に置きました。
I put my bag by the door.
私はかばんをドアのそばに置きました。
I put my bag in the locker.
私はかばんをロッカーに入れました。

のように、 どこに置いたのか まで表す必要がある。

put は、 単に「物に何かをする」動詞ではない。 物を、ある位置へ置く 動詞なのである。

目的語があれば文は終わるのか

第3文型を、

S+V+O があれば文が完成する型

と理解していると、 put の文は少し不思議に見える。

まず、 read の文を見てみよう。

I read the book in my room.
私は自分の部屋でその本を読みました。

この文から、 in my room を取り除いても、

I read the book.
私はその本を読みました。

という文は問題なく成立する。

どこで読んだのかは、 追加できる情報ではあるが、 read the book という出来事そのものを成立させるために 必ずしも必要ではない。

ところが、 put の場合は違う。

I put the book on the desk.
私はその本を机の上に置きました。

から、 on the desk を取り除くと、

*I put the book.

となり、 「本を……どうしたのか、どこに置いたのか」と、 文が途中で止まったように感じられる。

on the desk は、 単にあとから付け足した場所の説明ではない。 put が表す出来事を完成させるために必要な情報なのである。

同じ場所の表現でも、役割は同じではない

英語では、 場所を表す前置詞句は、 どれも文の後ろに現れやすい。

in my room
自分の部屋で
on the desk
机の上に
by the door
ドアのそばに

そのため、 これらをすべて単純に「場所を表す修飾語」として扱いたくなる。

しかし、 文から取り除いてみると、 役割の違いが見えてくる。

I read the book in my room.
→ I read the book.
場所を取り除いても文は成立する。
I put the book on the desk.
→ *I put the book.
場所を取り除くと文が成立しにくい。

見た目としては、 どちらも文末に置かれた場所の表現である。

しかし、

in my room:read に対して付け加えられた場所の情報
on the desk:put が要求する場所の情報

という違いがある。

「副詞句だから消してよい」 「前置詞句だから文型には関係ない」 と機械的に処理すると、 この違いが見えなくなってしまう。

SVOA型という見方

学校でよく習う5文型では、 文の主要素として、

S:主語
V:動詞
O:目的語
C:補語

を用いる。

しかし、 put のように、 場所などを表す語句がなければ文が成立しにくい動詞を考えると、 もう一つの要素を認めた方が分かりやすい。

A:文を成立させるために必要な副詞語句

である。

ここでいう「副詞語句」は、 必ずしも一語の副詞だけを意味しない。

文の中で、 場所・方向・状態などを表す働きをする語句を含む。

I put the book there.
私はその本をそこに置きました。
I put the book on the desk.
私はその本を机の上に置きました。

there は副詞一語であり、 on the desk は前置詞句である。

形は違うが、 どちらも put に対して 「どこに置いたのか」を示し、 文を完成させる働きをしている。

そこで、

I put the book on the desk.
S V   O    A

のような文を、 SVOA型 と見ることができる。

これは、 第3文型をただ細かく言い換えただけではない。

put という動詞が、

置く人・もの
置かれるもの
置かれる場所

という三つの情報を必要とすることを、 文型の形に表しているのである。

以前扱った live と、今回の put の違い

以前、 live は第一文型なのか という記事で、 live in Tokyo のような文を扱った。

live を 「住んでいる」という意味で使う場合、

My uncle lives in Kyoto.
私のおじは京都に住んでいます。

のように、 どこに住んでいるのかという場所の情報が重要になる。

ただし、 live には 「生きている」「生き残る」といった別の意味もあるため、

He lives.
彼は生きている。

という文自体がいつでも誤りになるわけではない。

大切なのは、 「住む」という意味の live が、 場所の情報と強く結びつくということである。

このとき、

My uncle lives in Kyoto.
S     V   A

を、 SVA型 と見ることができる。

一方、 今回の put は、 場所だけでなく、 置かれる物も必要とする。

My uncle lives in Kyoto.
SVA:誰が、どこに住んでいるか
I put the book on the desk.
SVOA:誰が、何を、どこに置いたか

SVASVOA は、 学校で学ぶ5文型の先に、 動詞が必要とする情報をさらに丁寧に見るための考え方である。

put は「置く」ではなく「何かをどこかに置く」

単語を覚えるとき、

put = 置く

とだけ覚えてしまうと、 英作文で足りない文を作りやすい。

put は、 本当は、

put A in B
AをBの中に入れる
put A on B
AをBの上に置く
put A under B
AをBの下に置く
put A back
Aを元の場所に戻す
put A away
Aを片づける

のように、 put A + 場所・方向を表す語句 という形で覚えた方が使いやすい。

たとえば、

Please put your phone in your bag.
携帯電話をかばんに入れてください。
Put the chairs back after class.
授業のあと、椅子を元に戻してください。
I put my keys on the shelf.
私は鍵を棚の上に置きました。

のように使える。

日本語訳を一語で覚えるだけでなく、 動詞がどのようなかたまりで使われるのか を見ることが、 英作文や会話で実際に使える語彙につながる。

英作文では「何を」のあとを確認する

put を使う英作文では、 「置く」「入れる」と訳せた時点で安心してはいけない。

目的語を書いたあとに、

どこに置くのか
どちらへ動かすのか
どの状態にするのか

が書けているかを確認するとよい。

たとえば、

私は教科書を机の上に置きました。

なら、

I put my textbook on the desk.

となる。

また、

彼は鍵をポケットに入れました。

なら、

He put the key in his pocket.

と表せる。

ここで、

I put my textbook.
He put the key.

としてしまうと、 文法的な形としては主語・動詞・目的語が並んでいるにもかかわらず、 put が求める情報が不足してしまう。

文型を理解することは、 記号を正しく振ることだけではない。

自分が書いた文に、 動詞が必要とする情報がそろっているかを判断することなのである。

5文型が間違いなのではない

ここまで見ると、 「学校で習う5文型は不十分なのか」 と思うかもしれない。

しかし、 5文型が役に立たないわけではない。

英文の大まかな骨格をつかむうえで、

SV
SVC
SVO
SVOO
SVOC

という整理は、 非常に見通しがよい。

ただし、 英語をもう少し丁寧に見るなら、 目的語や補語だけでなく、 動詞が必ず要求する場所・方向・状態の情報 にも目を向ける必要がある。

そのときに役立つのが、

SVA
SVOA

のような見方である。

文型は、 英文に名前をつけるためだけの分類ではない。

この動詞を使うなら、何をどこまで言わなければ文が完成しないのか を見抜くための道具なのである。

まとめ

put は、 「置く」と訳される他動詞である。

しかし、

*I put the book.

のように、 目的語だけを置いて文を終えることはできない。

put を 「物をある場所へ置く」という意味で使うときには、

I put the book on the desk.
私はその本を机の上に置きました。

のように、 置かれる場所まで示す必要がある。

その場所の情報は、 単なる付け足しではない。

I read the book in my room.
→ I read the book.
I put the book on the desk.
→ *I put the book.

の違いを見ると、 同じように場所を表す語句でも、 動詞にとって必要な度合いが異なることが分かる。

そこで、 put の文は、

I put the book on the desk.
S V   O    A

という SVOA型 で捉えることができる。

英語の文型を学ぶ意味は、 文を五種類に分類して終わることではない。

動詞が、

何を必要とするのか
どこまで言えば文が完成するのか
どのようなかたまりで覚えれば実際に使えるのか

を理解することにある。

put を見ると、 文型は単なる暗記項目ではなく、 英文を作るための設計図であることが見えてくる。

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