ポケモンの「でんこうせっか」は、英語で Quick Attack。二つの身近な単語からできた名前だが、なぜ「速い」がfastではなくquickなのか、と考えると面白い。
でんこうせっか → Quick Attack
quickにもfastにも「速い」という意味がある。ただ、何の速さに目を向けるかで、使いやすい言葉が変わる。走る速さ、返事の早さ、ちらっと見る短さ。同じ「はやい」でも、英語では少しずつ見え方が違う。
quickは「時間をかけずに、すばやく」
quickは「すばやい・短時間の」を表す形容詞。動作そのものが速い場合にも使うが、反応するまでの時間や、何かを終えるまでの時間が短い場面ともよく結びつく。
Thank you for your quick response.
→ すぐに返事をくれて、ありがとう。
a quick responseは、長く待たせない返事や対応。a quick decisionなら、短い時間で下す決断である。素早く決めたことを表すのであって、それだけで正しい決断だったとまでは言っていない。
Can I take a quick look at your notes?
→ ノートをちょっと見てもいい?
a quick lookは、さっと見ること。「目を高速で動かす」というより、見るのに長い時間をかけないイメージだ。quickをすべて「速度が高い」と訳すより、「どの時間が短いのか」を考えると理解しやすい。
fastは「動く速度」に目を向けやすい
fastも「速い」という形容詞だが、a fast carなら高速で走る車、a fast runnerなら走る速度の高い人が思い浮かぶ。
quick response → 返事や対応までが早い
quick look → 見る時間が短い
fast car → 走る速度が高い
これは使い分けの傾向であり、完全な境界ではない。quickも速い動きを表せるし、fastも「短時間で処理する」という場面に使える。日本語訳を一対一で固定するより、よく一緒に使われる名詞と覚えるほうが自然だ。
たとえば、短い休憩ならa quick break。移動速度ではなく、休憩に使う時間を伝えたいのでquickが合う。「速い=fast」とだけ覚えていると、この違いを見落としやすい。
quicklyは副詞。fastはそのまま副詞にもなる
quickから作る基本の副詞はquickly。「すばやく」のほか、「すぐに・ほどなく」という意味でも使う。
She answered quickly.
→ 彼女はすぐに答えた。
quick responseではquickが名詞responseを説明している。一方、answered quicklyではquicklyが「どのように答えたか」を説明する。
fastは形容詞でも副詞でも同じ形を使う。
That car is fast.
→ あの車は速い。
The train was moving fast.
→ 電車は速い速度で走っていた。
副詞だからといってfastlyにはしない。move fastとmove quicklyはどちらも自然で、同じ速い動きを表すこともある。quicklyは速度だけでなく、行動に移るまでの短さにも使える点を押さえておこう。
attackは「攻撃」でも「攻撃する」でも使える
attackには名詞「攻撃」と動詞「攻撃する」がある。Quick Attackでは、形容詞quickが名詞attackを説明し、全体で「すばやい攻撃」というまとまりになる。
The team launched an attack after the break.
→ 休憩の後、チームは攻撃を仕掛けた。
The team attacked from the left.
→ チームは左側から攻めた。
最初のattackは名詞、二つ目のattackedは動詞の過去形。スポーツでも使えるので、戦いの場面だけに限られた言葉ではない。
attackerは「攻撃する人・攻める選手」。また、attackは意見や方針を強く批判する意味にも広がる。何を対象にしているかで、実際の攻撃なのか、言葉による批判なのかが変わる。
ゲームでは「素早さを上げる」のではなく、先に動きやすい
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の「でんこうせっか」は、ノーマルタイプ・威力40の物理技。技の優先度は+1で、多くの通常技の優先度0より先に処理される。『Pokémon Champions』でも威力40・優先度+1という基本は共通している。
ターン制バトルでは、技を出す順番を素早さだけで決めるわけではない。まず技の優先度を比べるため、相手より素早さが低くても、相手が優先度0の技を使うなら先に攻撃できる。
通常技の優先度 → 多くは0
でんこうせっかの優先度 → +1
素早さそのものを上げずに、先に技を出しやすくする
「こうそくいどう」のように能力の素早さを高める技とは、仕組みが違う。威力の大きさよりも、相手が動く前に一撃を入れられる点が特徴である。
「必ず先制」ではない
相手がもっと優先度の高い技を選べば、そちらが先になる。たとえば「しんそく」は優先度+2なので、+1の「でんこうせっか」より先に動く。
双方が「でんこうせっか」など同じ優先度の技を使う場合は、通常は素早さの高いほうが先。素早さも同じなら、通常はランダムで順番が決まる。「トリックルーム」など順番を変える効果がある場合は、同じ優先度の中での並び方が変わる。
先に動くことと、攻撃が通ることも別である。ノーマル技なので通常はゴーストタイプに無効で、先制技を防ぐ特性などに止められる場合もある。「優先度が高い」を「どんな相手にも必ず先にダメージを与える」と読み替えないことが大切だ。
なお、『Pokémon LEGENDS』作品などでは行動順や技の仕組みが異なる。ここでの優先度の説明は、SVなどのターン制バトルについてのものだ。
「電光石火」の比喩を、quick + attackで見せる
日本語の電光石火は、非常に素早い動作や、ごく短い時間を表す四字熟語。「電光」は稲妻の光、「石火」は火打ち石から出る火花で、どちらも一瞬の光がもとになっている。
「電光石火の対応」と言えば、間を置かない素早い対応。その鮮やかな比喩を技名として読ませるのが、日本語の「でんこうせっか」である。
英語のQuick Attackは、光や火花を描く代わりに、どんな攻撃なのかを二つの単語で示す。日本語は一瞬の情景、英語は攻撃の性質に注目している、と見ると分かりやすい。
とっさに一撃を出す技にquickを重ねると、「長く待たず、さっと動く」という一般英語の感覚もつかみやすくなる。ただし、quickという単語そのものに「ゲームの優先度+1」という意味があるわけではない。
quickの古い意味は「生きている」
quickは、古英語のcwicにさかのぼり、もともと「生きている」という意味を持っていた。そこから、活発さや機敏さ、すばやい行動を表す意味が発達した。
今の英語でa quick responseと言うときに「生きた返事」と訳す必要はない。語の歴史を知ると、quickが単なる移動速度だけでなく、反応のよさとも結びつくことが少し面白く見えてくる。
まとめ
「でんこうせっか」は英語でQuick Attack。quickがattackを説明する、形容詞+名詞の名前である。
quick → すばやい・短時間の
quickly → すばやく・すぐに
fast → 速い / 速く
attack → 攻撃 / 攻撃する
quickとfastは意味が重なるが、quick responseやa quick lookでは時間の短さ、a fast carでは移動速度が前に出る。副詞のquicklyとfastまで一緒に覚えると、自分で文を作りやすい。
技の特徴は、素早さを上げることではなく、優先度によって先に攻撃しやすくすること。「速さ」にも、能力の高さ、反応の早さ、順番の早さがある。名前を比べると、普段ひとまとめにしている「はやい」が少し細かく見えてくる。