日本語の「は」と「が」は、とても難しい。
以前の記事でも、「は」と「が」の違いについて考えたことがある。
今回は、その総論をもう一度くり返すのではなく、情報構造という観点から少しだけ見てみたい。
つまり、
すでに話題になっているものを受けているのか。
それとも、新しく何かを提示しているのか。
という視点である。
「学校は駅の近くにあります」
まず、次の文を見てみる。
学校は駅の近くにあります。
この文では、「学校」が は で示されている。
このとき、「学校」はすでに話題になっているもの、あるいは聞き手が想定できるものとして扱われやすい。
たとえば、誰かがある学校について質問しているとする。
その学校って、どこにあるんですか。
学校は駅の近くにあります。
この場合、「学校」はすでに話題になっている。
だから、
その学校について言うと、駅の近くにあります。
という感じになる。
つまり、「学校は」の「は」は、学校を話題として取り出している。
「学校が駅の近くにあります」
一方で、次の文はどうだろうか。
学校が駅の近くにあります。
こちらは、「学校」を新しく提示している感じが強くなる。
たとえば、駅の近くに何があるのかを説明している場面を考える。
駅の近くには、学校があります。
この場合、聞き手にとって大事なのは、
駅の近くに何があるのか
である。
そこに「学校」が新しく提示されている。
つまり、「学校が」は、新情報を出している感じが強い。
「は」は話題、「が」は提示
かなり大ざっぱに整理すると、こう言える。
学校は駅の近くにあります。
→ 学校について言うと、駅の近くにあります。
学校が駅の近くにあります。
→ 駅の近くに、学校があります。
前者では、「学校」が話題になっている。
後者では、「学校」が新しく提示されている。
もちろん、これは「は」と「が」のすべてを説明するものではない。
しかし、
は:すでに話題になっているものを取り上げやすい
が:新しく何かを提示しやすい
という見方は、日本語の文を考えるうえでかなり役に立つ。
英語で考えると少し見えやすい
この違いは、英語と比べると少し見えやすくなる。
たとえば、
There is a school near the station.
は、
駅の近くに学校があります。
に近い。
ここでは、a school が新しく提示されている。
つまり、「駅の近くに何があるのか」という流れの中で、学校が登場している。
一方で、
The school is near the station.
は、
その学校は駅の近くにあります。
に近い。
ここでは、the school はすでに聞き手が分かっている学校である。
その学校について、新しく「駅の近くにある」という情報を加えている。
つまり、
There is a school near the station.
→ 学校が駅の近くにあります。
The school is near the station.
→ 学校は駅の近くにあります。
のように対応させると、情報の出し方が見えやすくなる。
ただし「は」と「が」はそれだけではない
ここで注意が必要である。
「は」と「が」の違いは、新情報・旧情報だけで完全に説明できるわけではない。
たとえば、
太郎が行きました。
は、単に「太郎」を新情報として出しているだけでなく、
行ったのは太郎です。
のように、太郎に焦点を当てている感じも出る。
また、「は」には対比の働きもある。
太郎は行きましたが、花子は行きませんでした。
このように、「は」と「が」はかなり多くの働きを持っている。
だから、この記事で見ているのは、あくまで一つの側面である。
情報構造から見ると、「は」は話題・旧情報寄り、「が」は提示・焦点寄りに見えることがある。
このくらいに押さえておくと、使いやすい。
学習者にとってのメリット
この視点は、日本語学習者だけでなく、英語学習者にも役に立つ。
英語の a / the や There is ... の感覚を考えるときに、 日本語の「は」と「が」の違いと比べられるからである。
たとえば、
There is a cat under the table.
テーブルの下に猫がいます。
では、猫が新しく登場している。
一方、
The cat is under the table.
その猫はテーブルの下にいます。
では、すでに話題になっている猫について、場所を説明している。
こうして見ると、日本語と英語はまったく同じではないが、どちらも
何を先に出すか
何を新しく伝えるか
を大切にしていることがわかる。
まとめ
「は」と「が」の違いは、一言で説明できるものではない。
しかし、情報構造の観点から見ると、次のような違いが見えやすくなる。
学校は駅の近くにあります。
→ 学校について言うと、駅の近くにあります。
学校が駅の近くにあります。
→ 駅の近くに、学校があります。
「は」は、すでに話題になっているものを取り上げやすい。
「が」は、新しく何かを提示したり、そこに焦点を当てたりしやすい。
英語で言えば、
There is a school near the station.
The school is near the station.
の違いと比べると見えやすい。
もちろん、日本語の「は」と「が」は、これだけで説明できるわけではない。
それでも、情報構造という視点を持つと、日本語の助詞も、英語の冠詞や語順も、少し立体的に見えてくる。