塾長ノート

won’t はなぜ willn’t ではないのか

短縮形に残った古い will

英語の短縮形は、基本的にはかなり分かりやすい。

do not → don’t
cannot → can’t
would not → wouldn’t
should not → shouldn’t

この流れで考えると、will not は、

will not → willn’t

になりそうである。

しかし、実際にはそうならない。

will not → won’t

である。

かなり不思議な形である。

なぜ won’twilln’t ではないのだろうか。

won’t は will not の短縮形

まず、現代英語の使い方としては、won’twill not の短縮形である。

I will not go.
= I won’t go.

意味は、

私は行かないつもりだ。
私は行かないだろう。

である。

ここまでは、普通の短縮形として理解できる。

ただし、形を見ると、他の短縮形とはかなり違う。

would not → wouldn’t
should not → shouldn’t
will not → won’t

will の ill がそのまま残っていない。

つまり、won’t は、現代英語の will + not をそのまま機械的に縮めた形ではない。

古い woll / wol 系の形が関係する

won’t の背景には、will の古い異形が関係している。

古い英語では、will に対応する形として wolwoll のような形が使われていた。

そのような形に not がつくと、

woll not
wol not

のような形になる。

そこから、

woll not / wol not
→ wonnot
→ won’t

のように縮まっていったと考えると、現在の won’t の形が見えやすくなる。

つまり won’t は、現代英語の will だけを見ていると不思議だが、 古い wol / woll 系の形を考えると、かなり納得しやすい。

willn’t ではなく won’t が残った

もし現代英語の感覚だけで作れば、

will not → willn’t

になりそうである。

しかし、実際に標準的な形として残ったのは won’t だった。

これは、言語がいつも「今の形から規則的に作られる」わけではないことを示している。

短縮形の中には、古い時代の発音や異形が残ることがある。

won’t は、その代表的な例である。

だから、won’t を見たときには、

will not の短縮形だけれど、古い woll / wol not 系の形が残っている

と考えるとよい。

go - went の補充法とは違う

ここで、前の記事で扱った go - went と比べてみたい。

go の過去形 went は、もともと wend という別の動詞の過去形だった。

つまり、別の語に由来する形が、go の活用に入り込んでいる。

これを 補充法 という。

一方、won’t は少し違う。

won’t は、別の動詞の形が will の活用に入り込んだわけではない。

むしろ、will に関係する古い異形と not が結びつき、短縮されて残った形である。

go - went:別の動詞の形が入り込んだ補充法
will not - won’t:古い異形と not の短縮が残った形

どちらも不規則に見えるが、仕組みは違う。

英語の基本語には古い形が残りやすい

will は、英語の中でも非常によく使われる助動詞である。

よく使われる語は、古い形や不規則な形を残しやすい。

これは、go や be などにも見られる。

日常的によく使われるからこそ、多少不規則でも、その形が定着してしまう。

won’t も、形だけ見ると変である。

しかし、長いあいだ使われ続けた結果、現代英語ではごく普通の短縮形として定着している。

学習者にとっては、

will not = won’t

と覚えるしかない部分もある。

しかし、背景を知ると、単なる「変な例外」ではなく、古い英語の形が残ったものとして見えてくる。

まとめ

won’t は、現代英語では will not の短縮形である。

I will not go.
= I won’t go.

しかし、形としては willn’t ではない。

その理由は、will の古い異形である wol / woll 系の形が関係しているからである。

かなり大ざっぱに言えば、

woll not / wol not
→ wonnot
→ won’t

という流れで考えるとよい。

ただし、これは go - went のような補充法ではない。

won’t は、別の語が will の活用に入り込んだのではなく、 will の古い異形と not が結びついた短縮形が残ったものである。

英語の不規則な形は、ただのバグではない。

そこには、古い形や音の変化が残っていることがある。

won’t は、そのことをよく見せてくれる短縮形である。

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