前の記事で、go の過去形が went になる理由を見た。
go - went - gone
went は、もともと go から作られた形ではない。
別の動詞 wend の過去形だったものが、go の過去形として使われるようになった。
このように、ある語の変化の中に、別の語に由来する形が入り込む現象を 補充法 という。
英語では suppletion と呼ばれる。
補充法とは何か
補充法とは、簡単に言えば、
ひとつの語の活用や変化の中に、別の語から来た形が使われること
である。
普通なら、ある語の過去形や比較級は、その語から作られるように見える。
walk - walked
tall - taller
この場合、形のつながりはかなりわかりやすい。
しかし、補充法ではそうではない。
go - went
good - better
のように、もとの語と変化した形があまり似ていない。
それは、別の語に由来する形が、その語の活用の一部として入り込んでいるからである。
go - went は代表的な例
補充法の代表例が、やはり go - went である。
go - went - gone
went は、もともとは wend の過去形だった。
wend - went
しかし、歴史の中で went が go の過去形として使われるようになった。
その結果、現代英語では、
go の過去形は went
として覚えることになる。
学習者にとってはただの不規則変化に見える。
しかし、言語学的には、別の語が活用の中に入り込んだ例として見ることができる。
good - better - best も補充法
形容詞にも補充法は見られる。
代表的なのが、
good - better - best
である。
普通の比較級なら、
tall - taller - tallest
のように、もとの形が残る。
もし good が規則的に変化するなら、
good - gooder - goodest
になってもよさそうである。
しかし、実際にはそうならない。
good - better - best
good と better は、形がまったく似ていない。
これも、別系統の語が比較級・最上級として入り込んだ例として見ることができる。
つまり、better は good から単純に形を変えて作られたわけではない。
good の比較級として、別の語に由来する形が使われているのである。
be 動詞もかなり不思議
もうひとつ、補充法を考えるうえで避けて通れないのが be動詞 である。
am
is
are
was
were
be
been
これらは、どれも「be動詞」として扱われる。
しかし、形を見るとかなりばらばらである。
am と is と are は、まったく似ていない。
was と were も、be と形がそろっているわけではない。
これは、歴史的に複数の語根が一つの活用体系の中にまとまっているためである。
つまり、be動詞は補充法的な不規則性を強く残している語だと言える。
なぜ基本語ほど不規則なのか
ここで気になるのは、なぜこうした不規則な形が基本語に多いのか、ということである。
go、good、be は、どれも非常によく使われる語である。
よく使われる語は、古い形が残りやすい。
毎日のように使われるため、多少不規則でも、その形が人々の中に定着しやすいからである。
反対に、あまり使われない語は、規則的な形にそろえられていくことがある。
つまり、基本語ほど古い不規則な形を抱え込みやすい。
よく使う語ほど、古い形が生き残る。
そう考えると、go や good や be が不規則なのも、少し見え方が変わる。
丸暗記の奥に歴史がある
英語学習では、
go - went - gone
good - better - best
be - am / is / are / was / were
のような形は、まず暗記するしかない。
しかし、それをただの「例外」として終わらせるのは少しもったいない。
そこには、別の語が入り込んだり、古い形が残ったりした歴史がある。
補充法という言葉を知ると、不規則変化は単なるバグではなく、 言語の歴史が残った形として見えてくる。
もちろん、英語を使うたびに補充法を意識する必要はない。
しかし、こういう背景を知っておくと、不規則な形にも少し納得感が出る。
まとめ
補充法とは、
ひとつの語の活用や変化の中に、別の語に由来する形が使われる現象
である。
英語では、たとえば次のようなものがある。
go - went
good - better - best
be - am / is / are / was / were
これらは、形だけ見るとかなり不規則である。
しかし、その背後には、複数の語や語根が一つの活用体系の中にまとまってきた歴史がある。
英語の不規則変化は、学習者にとっては厄介である。
しかし、その一つひとつには、言語の歴史が残っていることがある。
補充法は、そのことを教えてくれる言語学の考え方である。