塾長ノート

I / me / my はなぜ形が違うのか

代名詞に残った古い格変化

英語を習い始めると、かなり早い段階で人称代名詞が出てくる。

I
my
me
mine

学校では、これを表の形で覚えることが多い。

I:私は
my:私の
me:私を、私に
mine:私のもの

しかし、よく考えると不思議である。

どれも「私」に関わる語なのに、なぜ形がこんなに違うのだろうか。

動詞なら、

play → plays → played

のように、同じ語の形がある程度残る。

しかし、I / me / my は、ぱっと見ただけでは同じ語の変化に見えにくい。

この記事では、I / me / my の違いを、 英語に残った古い格変化として整理してみたい。

I / me / my は役割が違う

まず、現代英語の使い方から確認する。

I は、主語として使う。

I like English.
I am tired.

これは、「私は」にあたる。

一方、me は、目的語として使う。

She knows me.
Please help me.

これは、「私を」「私に」にあたる。

そして、my は、名詞の前について「私の」を表す。

my book
my friend
my idea

つまり、I / me / my は意味が完全に別々というより、 文の中での役割が違う。

I:主語
me:目的語
my:所有を表す形

と考えるとよい。

これは「格」の名残である

I / me / my の違いを考えるうえで大事なのが、である。

格とは、かなりざっくり言えば、

文の中で、その語がどんな役割をしているか

を示す仕組みである。

たとえば、日本語では助詞を使って役割を表す。

私が読む。
私を呼ぶ。
私の本。

日本語では、



のような助詞が、語の役割を示している。

一方、古い英語では、語そのものの形が変わることで、 役割を示す部分が今よりも大きかった。

現代英語では、そのような格変化はかなり弱くなっている。

しかし、人称代名詞には、古い格変化の名残が強く残っている。

その代表が、

I / me / my

である。

I は主格、me は目的格、my は所有格

学校英語の言い方で整理すると、I / me / my は次のように分けられる。

I:主格
me:目的格
my:所有格

主格は、主語になる形である。

I study English.

目的格は、動詞や前置詞の目的語になる形である。

He saw me.
She talked to me.

所有格は、名詞の前について「〜の」を表す形である。

This is my pen.

日本語にすると、

私は
私を / 私に
私の

のように助詞で違いを出す。

しかし英語では、代名詞そのものの形が変わる。

I
me
my

という違いは、まさにその名残である。

なぜ I に -s や -ed のような形をつけないのか

ここで、少し別の角度から考えてみたい。

もし現代英語の感覚だけで規則的に作るなら、 「私の」は、

I's

のようになってもよさそうである。

実際、普通の名詞では所有を表すときに 's をつける。

Tom's book
my sister's bag

しかし、「私の本」は、

my book

であって、ふつうは I's book とは言わない。

これは、代名詞が普通の名詞とは違う古い変化を残しているからである。

代名詞は、英語の中でも非常によく使われる語である。

よく使われる語は、古い形や不規則な形を残しやすい。

そのため、I / me / my のような形が、現代英語にも残っている。

これは補充法とは少し違う

ここで、前の記事までに見てきた 補充法 と比べてみたい。

補充法とは、ある語の活用に、別系統の形が入り込む現象である。

go → went
good → better → best
be → am / is / are / was / were

などが代表例である。

I / me / my も、形だけを見るとかなり不規則である。

ただし、これは補充法そのものというより、 代名詞に残った古い格変化として見た方が分かりやすい。

つまり、

別の語が入り込んだ

というより、

文の中での役割に応じて、代名詞の形が変わる古い仕組みが残っている

と考えるとよい。

とはいえ、共通点もある。

どちらも、英語の基本語に古い形が強く残っている例である。

we / us / our も同じように考えられる

同じことは、we / us / our にも言える。

we:私たちは
us:私たちを、私たちに
our:私たちの

たとえば、

We study English.
The teacher helped us.
This is our classroom.

のように使う。

ここでも、文の中での役割によって形が変わっている。

主語なら we
目的語なら us
所有なら our

である。

I / me / my だけが特別なのではない。

英語の人称代名詞には、こうした格変化の名残がまとまって残っている。

he / him / his も、she / her も同じ

さらに、三人称の代名詞にも同じことが言える。

he / him / his
she / her / her
they / them / their

これらも、主語・目的語・所有によって形が変わる。

He likes music.
I know him.
This is his guitar.

のように、役割に応じて形を使い分ける。

英語では名詞の格変化はかなり弱くなった。

しかし、人称代名詞には、 古い格の区別がかなりはっきり残っている。

だから、人称代名詞は、英語学習の最初に出てくるわりに、 実はかなり歴史の古い仕組みを背負っている。

日本語の「私が・私を・私の」と比べると分かりやすい

日本語と比べると、I / me / my の違いは見えやすい。

日本語では、「私」という語は基本的にそのままで、後ろに助詞をつける。

私が
私を
私に
私の

一方、英語では、代名詞そのものの形が変わる。

I
me
my

つまり、日本語では助詞が担っている役割の一部を、 英語では代名詞の形が担っている。

もちろん、英語にも語順や前置詞がある。

しかし、人称代名詞については、 形そのものが役割の違いを表している。

だから、I / me / my は、

意味がバラバラな別単語

というより、

「私」という代名詞が、文の役割に応じて形を変えているもの

と見ると分かりやすい。

英語学習では表だけでなく役割で覚える

英語学習では、人称代名詞の表を暗記することが多い。

I - my - me - mine
you - your - you - yours
he - his - him - his

もちろん、これは大事である。

しかし、表をただ丸暗記するだけだと、 どの場面でどの形を使うのかが分かりにくくなる。

大切なのは、役割で見ることである。

主語なら I
目的語なら me
名詞の前で「私の」なら my
「私のもの」なら mine

たとえば、

I like this book.
This book helps me.
This is my book.
This book is mine.

のように、文の中でどんな役割をしているかを見ればよい。

そうすると、I / me / my / mine は、 単なる暗記表ではなく、文の構造を表す道具として見えてくる。

まとめ

I / me / my は、どれも「私」に関わる語である。

しかし、文の中での役割が違う。

I:主語
me:目的語
my:所有を表す形

この違いは、英語に残った古い 格変化 の名残である。

現代英語では、名詞の格変化はかなり弱くなった。

しかし、人称代名詞には、主格・目的格・所有格の違いが今でも残っている。

だから、

I
me
my

のように、同じ「私」に関わる語でも形が変わる。

これは、go - went のような補充法そのものとは少し違う。

むしろ、代名詞に古い格の仕組みが残っている例として見るとよい。

英語の最初に習う I / me / my は、実は英語史のかなり古い仕組みを今に残している。

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