ポケモンの「どろぼう」は、英語で Thief。日本語も英語も「盗む人」を表す名詞で、意味はかなり直接的に対応している。
どろぼう → Thief
それでも、英語で「盗む」を話すにはthiefだけでは足りない。盗む人はthief、盗みという行為はtheft、物を盗むならsteal、人や場所から奪うならrob。技の名前から、犯罪に関する基本語の役割を整理してみよう。
thiefは「盗む人」
thiefは、他人の物を盗む人を表す可算名詞。「泥棒・窃盗犯」にあたる。
The police caught the thief.
→ 警察はその泥棒を捕まえました。
a car thiefなら車を盗む人。thiefは行為そのものではなく、人を指す。「彼が財布を盗んだ」と動作を言うときは、thiefを動詞のようには使わず、stealを使う。
複数形はthieves。thiefの最後のfがvesに変わるので、knife → knives、wife → wivesなどと同じ変化として覚えられる。
theftは「盗み・窃盗」
theftは、盗む行為や窃盗という出来事を表す名詞。人ではなく、犯罪・行為へ焦点を当てる。
The hotel reported the theft to the police.
→ ホテルはその盗難を警察に届けました。
car theftは自動車盗難、identity theftは個人情報を不正に使う「なりすまし・個人情報盗難」。thiefとtheftは形が似ているが、人と行為の違いがある。
thief → 盗む人
theft → 盗み・窃盗という行為や事件
stealは「盗まれる物」を目的語にする
stealは「盗む」という動詞。何を盗むのかを、そのまま後ろに置く。
Someone stole my bike.
→ 誰かが私の自転車を盗みました。
They tried to steal money from the store.
→ 彼らは店からお金を盗もうとしました。
steal A from Bで「BからAを盗む」。Aには盗まれる物、Bには持ち主や場所が入る。
stealは不規則動詞で、活用はsteal – stole – stolen。
The police found the stolen goods.
→ 警察は盗品を見つけました。
stolen goodsでは、過去分詞stolenが名詞goodsを説明して「盗まれた品・盗品」になる。過去形をstealedとはしない点にも注意したい。
robは「奪われる人・場所」を目的語にする
robも「盗む・奪う」に近いが、後ろには通常、被害にあう人や場所を置く。
They robbed a bank.
→ 彼らは銀行を襲って金品を奪いました。
A man robbed him near the station.
→ 男が駅の近くで彼から金品を奪いました。
stealが盗まれる物に焦点を当てるのに対し、robは奪われる人・銀行・店などに焦点を当てる。
steal the money → そのお金を盗む
rob the bank → その銀行を襲って金品を奪う
steal money from the bank → 銀行からお金を盗む
rob B of Aで「BからAを奪う」という形もある。ただし日常的には、物を目的語にするsteal A from Bのほうが作りやすい場面も多い。
これは文型の中心的な傾向で、意味がまったく交わらないという話ではない。大切なのは、rob my walletよりsteal my wallet、steal a bankよりrob a bankが基本だということだ。
robberとrobberyも一緒に整理する
robberは「強盗・奪う人」、robberyは「強盗・強奪という事件」。thief / theftと同じように、人と行為を分けて覚えられる。
thiefは盗む人を広く表せる。robberは、人や場所を襲って奪うイメージが強い。建物へ侵入して盗む人を表すburglarもあるが、犯罪語彙をすべて一度に覚えるより、まずthief・theft・steal・robの四つを使い分けられることが大切だ。
ゲームでは、攻撃しながら持ち物を奪う
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の「どろぼう」は、あくタイプ・威力60の物理技。相手へダメージを与えながら、条件を満たせば相手の持ち物を奪う。
使用者が何も持っておらず、相手が奪える持ち物を持っていることが基本条件。使用者がすでに持ち物を持っている場合や、相手が何も持っていない場合でも、攻撃そのものは通常どおり行われるが、持ち物は移らない。
使用者に持ち物がない + 相手に奪える持ち物がある
→ ダメージを与え、持ち物を奪う
条件を満たさない
→ ダメージは与えるが、持ち物は奪わない
技名は人を表すThiefだが、効果で起きていることを英語の文にすれば、The user steals the target’s held item.のように動詞stealが合う。名詞の技名と動詞の効果説明を比べると、品詞の違いも見えやすい。
どんな持ち物でも奪えるわけではない
相手の持ち物なら必ず奪えるわけではない。「ねんちゃく」のように持ち物を奪われないようにする特性が働く場合があるほか、特定のポケモンの姿や能力に深く関わる専用アイテムなど、移動できない持ち物もある。
また、攻撃を受けたときに相手のきのみなどが先に発動・消費されれば、奪う時点では持ち物が残っていないこともある。細かな例外は多いが、一般読者向けには使用者が空手であること、相手の持ち物が残っていて移動可能であることを押さえればよい。
戦闘が終わった後はどうなる?
現在のメインシリーズでは、トレーナー戦で奪った持ち物は一時的で、戦闘が終われば元に戻る。通信対戦で相手の大切な道具を永久に失わせる技ではない。
一方、野生のポケモンから奪った持ち物は入手できる。『スカーレット・バイオレット』では、奪った持ち物はプレイヤーのバッグへ入る。野生ポケモンの持ち物を集める手段としても使える。
「どろぼう」は第2世代からある技で、威力、PP、奪えない道具、戦闘後の処理は世代と作品によって変わってきた。ここでの威力60やバッグへの移動は現行SVを中心にした説明で、過去作へそのまま当てはめない。
日本語も英語も「盗む人」を技名にする
日本語の「どろぼう」と英語のThiefは、どちらも人を表す名詞である。技の動作そのものを表すなら、日本語では「盗む」、英語ではStealとする方法も考えられるが、実際の技名は「その行為をする者」を前に出す。
攻撃しながら相手の持ち物を取る姿を、一語で「泥棒」と名づけたように読むと分かりやすい。日本語と英語の意味は近くても、名詞の技名と動詞の効果を分けて見ることで、英語の語彙が横へ広がる。
まとめ
「どろぼう」は英語でThief。thiefは盗む人、theftは盗みという行為、stealとrobは「何を目的語にするか」が違う。
thief → 盗む人
theft → 盗み・窃盗
steal A from B → BからAという物を盗む
rob B → Bという人・場所から奪う
stole / stolen → stealの過去形 / 過去分詞
ゲームでは、あくタイプ・威力60の攻撃としてダメージを与え、使用者が持ち物を持っていないなどの条件を満たすと相手の持ち物を奪う。トレーナー戦では戦闘後に戻り、現行SVで野生ポケモンから奪った物はバッグへ入る。
技名はThiefという「人」、実際の動作はstealという「盗む」。一つの技から、人・行為・動詞・活用を分けて覚えると、似た犯罪語彙を文の中で使いやすくなる。