ポケモンの技「トリック」は、英語でも Trick。
トリック → Trick
同じ音の名前なので、そのまま対応しているように見える。しかし英語のtrickには、「仕掛け」だけでなく、いたずら、策略、手品、こつ、そして「だます」という動詞まで幅広い使い方がある。
ゲームでは、相手の意表を突いて持ち物を交換する技。この働きから、trickが持つ「巧みに相手を出し抜く」という中心イメージが見えてくる。
ゲームでは、お互いの持ち物を交換する
ターン制作品の「トリック」は、使用者と相手が持っている道具を交換するエスパータイプの変化技である。
たとえば、使用者がこだわり系の道具を持ち、相手が回復用の道具を持っていれば、技の成功後は持ち主が入れ替わる。単に相手の道具を奪うのではなく、原則として交換する技である。
両方が持っている → 道具を交換する
片方だけが持っている → 道具がもう片方へ移る
両方とも持っていない → 失敗する
片方だけが持っている場合も成功する
「交換」といっても、必ず双方が道具を持っている必要はない。使用者だけが持っていれば相手へ渡り、相手だけが持っていれば使用者が受け取る。
この性質を利用すると、相手の戦い方に合わない道具を渡して行動を制限したり、相手の有用な道具を別のものと入れ替えたりできる。攻撃で直接ダメージを与えず、道具の働きを利用して状況を変える技である。
どんな道具でも交換できるわけではない
双方とも道具を持っていない場合のほか、相手が「みがわり」の後ろにいる場合や、特性「ねんちゃく」で道具を守っている場合には失敗する。
また、Zクリスタルのような特殊な道具や、特定のポケモンと強く結びついた一部の専用道具は交換できないことがある。レイドバトルでは技そのものが失敗する作品もある。
例外は作品や世代で増減してきたため、「通常の持ち物は交換できるが、持ち主やバトル形式に結びついた特別なものには制限がある」と押さえると分かりやすい。
交換した道具は、通常の対人戦では試合後に戻る
近年のトレーナー戦や通信対戦では、バトル中に「トリック」で交換された道具は、バトルが終わると元の持ち主へ戻る。対戦相手から道具を永久に奪う技ではない。
第3・第4世代には道具の扱いが現在と異なる部分があったが、第5世代以降は対戦中の交換として整理されている。技の中心である「お互いの持ち物を入れ替える」という働きは変わっていない。
日本語の「トリック」は、からくりや仕掛けに寄りやすい
日本語のカタカナ語「トリック」は、人の目をあざむくからくりや仕掛け、巧みな技を表すことが多い。「トリックを見破る」「映像のトリック」のような使い方が典型である。
英語から入った語なので意味は重なるが、日本語では名詞として使うことが中心。一方、英語のtrickは日常的ないたずら、手品、便利なこつ、悪意のある策略まで広く表し、動詞にもなる。
名詞の trick ① いたずら・策略
人を驚かせたり、だましたりする行為がtrick。軽いいたずらから悪質な策略まで、文脈によって深刻さが変わる。
They played a trick on their teacher.
→ 彼らは先生にいたずらをした。
play a trick on someoneで「人にいたずらをする・一杯食わせる」。楽しい冗談にも使えるが、a dirty trickなら「卑劣な手・汚いやり方」となり、はっきり否定的である。
名詞の trick ② 手品・こつ
a magic trickは「手品」。観客には不思議に見える、巧みな技や仕掛けを指す。
The magician showed us a simple card trick.
→ その手品師は簡単なカードマジックを見せてくれた。
trickには「うまくやるためのこつ・方法」という意味もある。
The trick to making smooth sauce is to keep stirring.
→ なめらかなソースを作るこつは、混ぜ続けることだ。
人をだます意味がなくても、「知っているとうまくできる巧みな方法」という感覚からtrickを使える。
trick question は、引っかけ問題
a trick questionは、普通に答えると間違えやすい「引っかけ問題」。質問の前提や言葉の選び方に仕掛けがある。
Be careful—that is a trick question.
→ 気をつけて。それは引っかけ問題だよ。
日本語の「トリック」に近い「仕掛け」の感覚と、英語の「だます・勘違いさせる」という感覚が一緒に見える表現である。
動詞の trick は「だます」
動詞のtrickは、人に誤ったことを信じさせたり、仕掛けによって出し抜いたりすることを表す。
The message was designed to trick users.
→ そのメッセージは利用者をだますために作られていた。
特に便利なのがtrick someone into doing somethingで、「人をだまして〜させる」。intoの後ろには動名詞が続く。
The fake website tricked him into entering his password.
→ その偽サイトは彼をだましてパスワードを入力させた。
ポケモンの技も、相手の意表を突いて道具を交換させる。初期作品の英語説明には、相手をtrickして交換させるという動詞の使い方がそのまま現れている。
tricky は「難しい」か「人を惑わせる」
trickyは形容詞で、主に二つの方向がある。一つは、注意や技術が必要な「扱いにくい・難しい」。もう一つは、人を惑わせそうな「油断ならない・信用しにくい」である。
This is a tricky problem, so read it carefully.
→ これは難しい問題なので、注意して読みなさい。
a tricky problemは、必ずしも誰かが意地悪な仕掛けを入れた問題とは限らない。単に解決が難しい場合にも使える。人についてtrickyと言うと、行動が読みにくい、信用しにくいという否定的な響きになることがある。
trick・fool・deceive・cheatの違い
「だます」に近い語でも、焦点が少しずつ違う。
trick → 仕掛けや策略で相手を出し抜く
fool → 相手に誤ったことを信じ込ませる
deceive → 真実を隠してだます、やや改まった語
cheat → 不正をする・規則を破って利益を得る
境界は重なるため、絶対的な四分割ではない。手段の巧妙さならtrick、誤信させる結果ならfoolやdeceive、試験・ゲーム・取引などの不正ならcheatが選ばれやすい。
「策略」から、手品・いたずら・こつへ
trickは15世紀初めごろ、「だますための策略・たくらみ」という意味で英語に入り、古いフランス語の「欺き」を表す語へさかのぼる。
そこから、巧みな方法、いたずら、驚かせる妙技や手品へと意味が広がった。どの用法にも、「普通には見えない仕掛けや工夫によって、相手の予想を外す」という感覚が残っている。
同じTrickでも、英語では見える範囲が広い
日本語名と英語名は、音もつづりもほぼ同じ。今回は別々の言葉を結びつけたローカライズではなく、英語trickをそのままカタカナ名として共有している。
ただし、日本語だけを見ると「仕掛け・からくり」の名詞で理解しやすい。英語ではさらに、「相手をだます」という動詞まで自然につながる。持ち物を巧みに交換させる技として見ると、名詞と動詞の両方のイメージが重なっていると考えられる。
まとめ
ポケモンの「トリック」は、英語でもTrick。
trick(名詞)→ いたずら・策略・手品・こつ
trick(動詞)→ だます・出し抜く
play a trick on someone → 人にいたずらをする
trick someone into doing → 人をだまして〜させる
tricky → 難しい・扱いにくい / 油断ならない
ゲームでは、使用者と相手の持ち物を交換する。片方だけが持っている場合は道具が移り、双方とも持っていなければ失敗する。特殊な持ち物や特性などによって交換できない場合もある。
日本語のカタカナ語は「仕掛け」に寄りやすいが、英語のtrickは日常のいたずらから策略、手品、便利なこつ、動詞の「だます」まで広がる。技名から、多義語のまとまりを一語で学べる。