英語の比較級・最上級は、基本的には分かりやすい。
small → smaller → smallest
fast → faster → fastest
tall → taller → tallest
この流れで考えると、good も、
good → gooder → goodest
になりそうである。
しかし、実際にはそうならない。
good → better → best
である。
かなり基本的な単語なのに、形はかなり不規則である。
なぜ good の比較級・最上級は、gooder / goodest ではなく better / best なのだろうか。
現代英語では better / best が標準形
まず、現代英語のルールとしては、good の比較級・最上級は次の形になる。
good
better
best
たとえば、
This is good.
This is better.
This is the best.
という形で使う。
標準的な英語では、普通は gooder や goodest とは言わない。
もちろん、ふざけて言う場合や、子どものことばのように使う場合はありうる。
しかし、通常の英語としては、
gooder ではなく better
goodest ではなく best
である。
つまり、現代英語の中では、 better と best が good の比較級・最上級として働いている。
better / best は good に -er / -est をつけた形ではない
ここで大事なのは、better や best は、 good にそのまま -er や -est をつけた形ではないということである。
もし good に規則的に比較級・最上級をつけるなら、
good + er → gooder
good + est → goodest
のようになるはずである。
しかし、実際の形は、
better
best
である。
見て分かる通り、good という形が残っていない。
つまり、better / best は、現代英語の good から機械的に作られた形ではない。
ここに、英語史のおもしろいところがある。
better / best には別系統の語根が残っている
better / best の背景には、good とは別系統の古い語根が関係している。
かなり大ざっぱに言えば、もともと「よりよい」「もっともよい」にあたる形として、 better や best につながる古い形があった。
その一方で、現代英語の good につながる形もあった。
そして、現在の英語では、
原級:good
比較級:better
最上級:best
という1つのセットとして使われている。
つまり、形の上では同じ語から作られていないものが、 文法上は同じ単語の活用セットのように並んでいる。
これが、補充法と呼ばれる現象である。
補充法とは、別の形が活用の穴を埋めること
補充法とは、ある単語の活用に、別系統の形が入り込んでいるような現象である。
前の記事で見たように、代表的な例に、
go → went
がある。
went は、もともと go から規則的に作られた過去形ではない。
別の動詞に由来する形が、go の過去形として使われるようになった。
good / better / best も、それに近い。
good → gooder → goodest
という規則的な形ではなく、
good → better → best
という別系統の形を含むセットになっている。
だから、better / best は単なる「変な例外」というより、 補充法の例として見ると整理しやすい。
なぜ基本語ほど不規則になりやすいのか
ここで不思議なのは、good がとても基本的な単語だということである。
英語学習のかなり早い段階で出てくる語であり、日常会話でも非常によく使う。
それなのに、形は不規則である。
ただ、実はここが重要である。
よく使われる語ほど、古い形や不規則な形を残しやすい。
なぜなら、頻繁に使われる語は、多くの人がその形を何度も聞き、何度も使うからである。
多少不規則でも、
そういうものとして覚えられ、使われ続ける
のである。
逆に、あまり使われない語は、規則的な形にそろえられやすい。
たとえば、あまりなじみのない形が不規則だと、使う側にとって負担が大きい。
しかし、good / better / best のような超基本語は、 形が不規則でも、そのまま覚えられて残りやすい。
「よい」は言語の中で特別になりやすい
もう1つおもしろいのは、「よい」という意味の語が、多くの言語で不規則になりやすいことである。
「よい」「悪い」「多い」「少ない」「行く」「来る」「ある」などは、 どの言語でも非常によく使われる基本語である。
そのため、古い形を残したり、別の語に由来する形とセットになったりしやすい。
英語でも、
good → better → best
bad → worse → worst
のように、基本的な評価語に不規則な形が残っている。
ただし、この記事では good / better / best に絞っておく。
bad / worse / worst も、いずれ別の記事として扱えるテーマである。
gooder / goodest が絶対に存在しないわけではない
ここで少しだけ注意しておきたい。
gooder や goodest は、標準的な英語では普通の比較級・最上級としては使わない。
しかし、ことば遊びや幼児語、冗談のような文脈では見かけることがある。
たとえば、日本語でも、
もっとよい
いちばんよい
と言うべきところを、わざと変な形で言って笑いを取ることがある。
それと同じように、英語でも gooder / goodest が意図的に使われる可能性はある。
ただし、それは標準的な比較級・最上級ではない。
英語学習としては、まずは素直に、
good - better - best
と覚えるのがよい。
英語学習では「例外」ではなく「古いセット」と見る
good / better / best は、学校英語では「不規則変化」として扱われることが多い。
もちろん、それで間違ってはいない。
テストで使うなら、
good の比較級は better
good の最上級は best
と覚える必要がある。
ただ、それだけだと、少し味気ない。
背景を知ると、これは単なる気まぐれな例外ではなく、 古い形が1つのセットとして残ったものだと見えてくる。
英語は、すべてがきれいに規則で並んでいる言語ではない。
しかし、不規則に見える形の中にも、歴史的な理由があることが多い。
good / better / best は、そのことをかなり分かりやすく見せてくれる例である。
まとめ
good の比較級・最上級は、
good → better → best
である。
標準的な英語では、普通は gooder / goodest とは言わない。
better / best は、good にそのまま -er / -est をつけた形ではない。
good とは別系統の古い形が、比較級・最上級として使われるようになったものと考えるとよい。
このように、別系統の形が1つの活用セットに入り込む現象を 補充法 という。
go の過去形が went になるのと同じように、 good の比較級・最上級が better / best になるのも、英語に残った補充法の例である。
英語の基本語には、古い形や不規則な形が残りやすい。
だから、better / best はただの例外ではなく、 英語の歴史がそのまま残った形として見ることができる。