前の記事では、
good → better → best
bad → worse → worst
のような不規則な比較級・最上級を扱った。
では、many と much はどうだろうか。
many は「数が多い」、much は「量が多い」という意味である。
many books
much water
のように、many は数えられる名詞、much は数えられない名詞に使う。
しかし、比較級・最上級になると、どちらも同じ形を使う。
many → more → most
much → more → most
なぜ many と much は、別の単語なのに、比較級・最上級では同じ more / most を使うのだろうか。
many と much は使い分ける
まず、現代英語では、many と much は使い分ける。
many は、数えられるものに使う。
many students
many books
many questions
一方、much は、数えられないものに使う。
much water
much time
much money
つまり、many は「数」、much は「量」に関わる語である。
この段階では、かなりはっきり区別されている。
だから、学習者としては、
many = 数えられる名詞
much = 数えられない名詞
と整理することが多い。
比較級・最上級では more / most を共有する
ところが、比較級・最上級になると、話が変わる。
many の比較級・最上級は、
many → more → most
である。
much の比較級・最上級も、
much → more → most
である。
たとえば、数えられる名詞でも、
I have many books.
I have more books than you.
He has the most books.
と言う。
また、数えられない名詞でも、
I need much time.
I need more time.
This takes the most time.
と言う。
many と much は原級では区別されるのに、比較級・最上級では more / most に合流する。
ここが、この語の面白いところである。
mancier / mucher にはならない
もし many や much に規則的に -er / -est をつけるなら、 次のような形になりそうである。
many → manier → maniest
much → mucher → muchest
実際、歴史的には many に対して、 manier / maniest のような形が見られたこともある。
しかし、現代英語の標準的な形として定着しているのは、
more
most
である。
つまり、more / most は、現代英語の many や much に 単純に -er / -est をつけた形ではない。
ここにも、古い語形の重なりがある。
more はもともと「より大きい」に近い形だった
more の背景には、古い英語の māra のような形がある。
これは、「より大きい」「より多い」「より強い」といった意味をもつ比較の形だった。
そして、古い英語では、現代英語の much につながる micel という語があった。
micel は、「大きい」「多い」「大いなる」といった広い意味をもつ語である。
more は、もともとこの micel の比較級として使われていた。
micel:大きい、多い
māra:より大きい、より多い
つまり、more は、もともと「many に -er をつけた形」ではなく、 「大きい・多い」に関わる別系統の古い比較形だったと見ると分かりやすい。
most も古い最上級の形である
most も同じである。
most の背景には、古い英語の mǣst のような形がある。
これは、「もっとも大きい」「もっとも多い」という意味の最上級の形だった。
つまり、
more:より多い、より大きい
most:もっとも多い、もっとも大きい
という古い比較・最上級の形が、現代英語にも残っている。
その結果、現代英語では、
many → more → most
much → more → most
という形で使われている。
数と量の両方に使えるから便利だった
many は「数」に、much は「量」に使う。
しかし、more / most は、現代英語では数にも量にも使える。
more books
more water
the most books
the most water
books は数えられる名詞である。
water は数えられない名詞である。
それでも、どちらにも more / most を使うことができる。
これは、more / most が単に「many の比較級」というより、 「より多い」「もっとも多い」という広い比較の意味をもつからである。
数が増える場合にも、量が増える場合にも使える。
だから、many と much の比較級・最上級として、more / most が共通して使われるようになったと考えると分かりやすい。
これは補充法として整理できる
many / much と more / most の関係も、広い意味では 補充法 として整理できる。
補充法とは、ある語の活用の中に、別系統の形が入り込む現象である。
たとえば、
go → went
good → better → best
bad → worse → worst
のような例がある。
many / much も、
many → manyer → manyest
much → mucher → muchest
のように規則的に作るのではなく、
many → more → most
much → more → most
という別の古い形を使っている。
その意味で、more / most は、 many / much の活用セットに入り込んだ古い比較形と見ることができる。
more は比較級を作る語としても広がった
さらに、more は many / much の比較級としてだけでなく、 長い形容詞の比較級を作る語としても使われる。
interesting → more interesting
difficult → more difficult
important → more important
この場合の more は、「より」という比較の意味を加えている。
つまり、more は単なる many / much の比較級にとどまらず、 英語全体の比較表現を支える語になっている。
同じように、most も長い形容詞の最上級を作る。
interesting → the most interesting
difficult → the most difficult
important → the most important
many / much の比較級・最上級としての more / most と、 形容詞の比較表現を作る more / most は、現代英語ではとても重要な役割をもっている。
英語学習では「数にも量にも使える」と押さえる
英語学習としては、まず次のように整理するとよい。
many:数が多い
much:量が多い
more:数・量がさらに多い
most:数・量がもっとも多い
原級では many / much を使い分ける。
many books
much water
しかし、比較級・最上級では more / most に合流する。
more books
more water
the most books
the most water
このように考えると、many と much がなぜ同じ比較級・最上級をもつのかが見えやすくなる。
more / most は、「数が多い」にも「量が多い」にも対応できる、広い比較表現なのである。
まとめ
many と much は、現代英語では使い分ける。
many books
much water
many は数えられるもの、much は数えられないものに使う。
しかし、比較級・最上級では、どちらも more / most を使う。
many → more → most
much → more → most
more / most は、many や much に単純に -er / -est をつけた形ではない。
more は古い英語の māra、most は mǣst のような形にさかのぼる。
これらは、「より大きい」「より多い」「もっとも大きい」「もっとも多い」という広い意味をもつ古い比較形だった。
そのため、数にも量にも使うことができる。
結果として、現代英語では、
many books → more books → the most books
much water → more water → the most water
のように、many と much が more / most を共有している。
ただの丸暗記としてではなく、 「数と量をまとめて比較できる古い形が残った」と見ると、 more / most の役割がかなり分かりやすくなる。