日本語では、
マンションに住んでいる
駅前のマンション
分譲マンションを買う
のように、「マンション」という言葉を自然に使う。
ところが、英語で、
I live in a mansion.
と言うと、日本語の「マンションに住んでいます」とはかなり違う意味になる。
英語の mansion は、基本的に「大邸宅」「豪邸」を表す語だからである。
ただし、ここで「日本語のマンションは間違った英語だ」と言って終わるのは少しもったいない。
日本語の「マンション」は、日本語の住居の分類の中で、 集合住宅の一種を表す語としてきちんと定着している。
英語と日本語では、同じ住まいに対して、 そもそも違うところに分類の線を引いているのである。
英語の mansion は「豪邸」
英語の mansion は、一般に非常に大きく立派な家を表す。
a large mansion
大きな邸宅
The actor bought a mansion by the lake.
その俳優は湖のそばに豪邸を買った。
英語で mansion と聞くと、 多くの人が思い浮かべるのは、集合住宅の一室ではなく、 広い土地に建つ大きく豪華な一軒家である。
そのため、
I live in a mansion.
と言うと、 「私は豪邸に住んでいます」という意味に受け取られやすい。
英語では apartment が基本になる
日本語の「マンション」の一室に住んでいると言いたいとき、 英語ではまず apartment が使いやすい。
apartment
集合住宅の一室・アパート
たとえば、
I live in an apartment in Tokyo.
私は東京のマンションに住んでいます。
She rented a new apartment near the station.
彼女は駅の近くに新しい部屋を借りた。
と言える。
英語の apartment は、日本語の「アパート」だけに対応する語ではない。
日本語で「マンション」と呼ぶような集合住宅の部屋でも、 英語では apartment と表すことが多い。
分譲なら condo も使える
condominium、短く言えば condo は、 住戸ごとに所有される集合住宅や、その一室を表す語である。
condo
分譲集合住宅・分譲マンションの一室
たとえば、
They bought a condo in the city.
彼らは市内に分譲マンションを買った。
She owns a condo near the station.
彼女は駅の近くに分譲マンションを所有している。
のように使える。
かなり単純化して言えば、
apartment:集合住宅の部屋。特に賃貸の文脈で使いやすい
condo:所有している分譲住戸を言うときに使いやすい
と整理できる。
ただし、実際の使われ方には地域差もあるため、 日本語の「マンション」と英語の一語が完全に一対一で対応するわけではない。
イギリス英語では flat も使う
イギリス英語では、集合住宅の一室を表す基本語として、
flat
もよく使われる。
I live in a flat in London.
私はロンドンの集合住宅の一室に住んでいる。
つまり、日本語の「マンション」を英語にするときは、 文脈や地域によって、
apartment
condo
flat
のような語が候補になる。
最初は、アメリカ英語を中心に、
賃貸の部屋なら apartment
分譲・所有を強調するなら condo
と覚えておくと使いやすい。
日本語では「アパート」と「マンション」が分かれる
日本語では、
アパート
マンション
は、どちらも集合住宅を表す語でありながら、 同じ印象を持つ語ではない。
日常的には、「アパート」よりも「マンション」の方が、 比較的大きい、しっかりしている、設備が整っている、といった印象と結びつくことがある。
一方、英語の apartment と condo の区別では、 建物の見た目だけでなく、 借りて住むのか、所有しているのかという違いが前に出やすい。
日本語:建物の印象や呼び分けとしての「アパート / マンション」
英語:住戸や所有形態を表す「apartment / condo」
同じ集合住宅を扱っていても、 日本語と英語では、分類の仕方が少し違うのである。
外来語は意味をそのまま運んでくるとは限らない
「マンション」は、英語の mansion と音が近い。
しかし、日本語に入ったあとの「マンション」は、 英語の mansion と同じ意味で使われているわけではない。
日本語の中では、
集合住宅の一種
アパートとは少し異なる印象の住まい
分譲・賃貸の物件名にも使われる語
として働いている。
外国語から入った語は、もとの言語の意味をそのまま保存するだけではない。
日本語の中で、既存の語との関係を持ち、 日本語話者が必要とする分類に合わせて、新しい意味を担うことがある。
「マンション」は、そのことがよく見える語である。
「通じないからダメ」では見えないもの
英語学習としては、
mansion = 豪邸
apartment / condo = 日本語のマンションに近い表現
と覚えることが必要である。
しかし、日本語の「マンション」を、 「英語では通じない変な言葉」とだけ見る必要はない。
日本語話者は、英語由来の音を取り込みながら、 日本の住宅事情や生活感覚の中で使いやすい語として、 「マンション」という言葉を定着させてきた。
そこには、言葉を借りる側の文化や分類の仕方が表れている。
外来語のおもしろさは、 元の言語とのズレそのものにある。
英作文・英会話での注意
英作文や英会話では、次のような日本語で迷いやすい。
私は駅の近くのマンションに住んでいます。
一般的には、
I live in an apartment near the station.
と言える。
また、
両親は東京に分譲マンションを買いました。
なら、
My parents bought a condo in Tokyo.
のように言える。
一方、
He lives in a mansion.
と言えば、 「彼は豪邸に住んでいる」という意味になる。
よく使う形で覚える
「マンション」まわりの英語は、次の形で覚えておくと使いやすい。
mansion
豪邸・大邸宅
apartment
集合住宅の一室
condo
分譲集合住宅・所有している集合住宅の一室
flat
集合住宅の一室:主にイギリス英語
live in an apartment
集合住宅の一室に住む
buy a condo
分譲マンションを買う
日本語の一語を機械的に英語へ移すのではなく、 どんな住まいを、どんな立場で言っているのかを見ると選びやすい。
まとめ
日本語の「マンション」は自然な外来語だが、 英語の mansion は基本的に「豪邸」を表す。
日本語の「マンション」に近い内容を英語で言うなら、
apartment
condo
flat
などを文脈に応じて使う。
まずは、
apartment:集合住宅の一室
condo:分譲・所有を意識した集合住宅の一室
mansion:豪邸
と押さえておきたい。
ただし、「マンション」は間違った日本語なのではない。 日本語の中で、集合住宅を分類するための語として定着している。
和製英語や外来語を見るときは、 英語では何と言うのか と同時に、 日本語がその語をどのように受け取り、どんな意味を持たせたのか を見ることが大切である。