日本語では、
ペットボトルの水を買う
ペットボトルを捨てる
ペットボトルをリサイクルする
のように、「ペットボトル」という言葉を日常的に使う。
英語らしい音を含む言葉なので、 英語でもそのまま pet bottle と言えばよさそうに思えるかもしれない。
しかし、日常的に飲み物の入ったプラスチック製のボトルを指すなら、 英語ではまず、
plastic bottle
が使いやすい。
I bought a plastic bottle of water.
ペットボトルの水を買った。
ただし、「ペットボトル」は単純に英語では存在しない言葉、というわけでもない。
英語にも PET bottle という表現はあり、 素材やリサイクルについて話す場面では使われる。
今回おもしろいのは、 英語では素材名として現れやすい PET が、 日本語では身近な容器そのものの名前として定着していることである。
日常英語では plastic bottle が使いやすい
日常会話で「ペットボトル」と言いたいときは、 plastic bottle をまず覚えておくとよい。
plastic bottle
プラスチック製のボトル・ペットボトル
たとえば、
Please put the empty plastic bottle in this bin.
空のペットボトルをこの箱に入れてください。
I always carry a plastic bottle of water.
私はいつもペットボトルの水を持ち歩いている。
Don't leave plastic bottles on the desk.
机の上にペットボトルを置きっぱなしにしないでください。
のように言える。
plastic bottle は、素材を細かく限定せず、 「プラスチックでできたボトル」を広く表す語である。
旅行先や日常会話で、目の前の飲料容器を指したいだけなら、 PET という素材名まで持ち出さず、plastic bottle と言えば十分なことが多い。
PET は素材の名前である
日本語の「ペットボトル」の「ペット」は、 犬や猫などの pet を表しているわけではない。
PET は、
polyethylene terephthalate
ポリエチレンテレフタレート
という素材名の頭文字を取ったものである。
飲料の容器などに使われる透明なプラスチック素材の一つであり、 日本語ではその素材で作られたボトルを、
PETボトル
ペットボトル
と呼ぶようになっている。
つまり、「ペットボトル」は、 素材を表す略称と「ボトル」が組み合わさり、 日本語の中で日常的な物の名前になった言葉である。
PET bottle は英語でも使われる
ここで注意したいのは、 PET bottle という表現そのものは英語でも使われる、ということである。
PET bottles are widely used for beverages.
PETボトルは飲料容器として広く使われている。
このような文は、 素材、包装、製造、環境、リサイクルなどについて説明する場面では自然である。
ただし、英語の日常会話で、
水のペットボトルを買った
と言いたいだけなら、
I bought a plastic bottle of water.
のように、plastic bottle の方が出しやすい。
かなり大まかに整理すると、
plastic bottle:日常的にプラスチック製のボトルを指す
PET bottle:PETという素材で作られたボトルであることを表す
という違いである。
plastic bottle と PET bottle は完全には同じではない
日本語では、飲料用の透明なプラスチック容器を見て、 かなり自然に「ペットボトル」と呼ぶ。
しかし、英語の plastic bottle は、 PETに限らず、プラスチック製のボトルを広く表せる。
plastic bottle:プラスチック製ボトル全般
PET bottle:PET素材のボトル
つまり、plastic bottle の方が意味は広い。
日本語の「ペットボトル」は、日常語として非常に便利だが、 英語にするときには、
日常的に容器を指したいのか
素材としてPETであることを示したいのか
によって表現を選ぶことになる。
日本語では素材名が日常語になった
「ペットボトル」の面白さは、 素材の略称だった PET が、 日本語ではごく普通の生活語になっていることである。
私たちは日常生活で、
ペットボトルを買う
ペットボトルを開ける
ペットボトルを捨てる
と言う。
このとき、毎回「ポリエチレンテレフタレート製の容器」を意識しているわけではない。
日本語の中では、「ペットボトル」はすでに、 素材の説明というより、物の種類を表す名前として働いている。
たとえば、
ペットボトル飲料
ペットボトル回収箱
ペットボトルホルダー
のように、さらに別の語と結びついて新しい表現も作れる。
外国語由来の要素は、 日本語に入ったあと、単に借り物のままで残るのではなく、 日本語の中で新しい語を作る材料にもなるのである。
英語から来た言葉が、日本語の生活を整理する
「ペットボトル」は、 英語の略称を取り込んだ言葉である。
しかし、日本語話者にとっては、 単なる英語のコピーではない。
ガラスびん、缶、紙パック、ペットボトルというように、 飲料容器を分類するための、ごく普通の日本語になっている。
びん
缶
紙パック
ペットボトル
ここでは、「ペットボトル」は日本語の語彙体系の中で、 他の容器名と並びながら意味を持っている。
英語由来だから英語と同じように使える、ということではない。
日本語の中に入った時点で、 その語は日本語の分類の中で、新しい価値を持ち始める。
英作文・英会話での注意
英作文や英会話では、次のような日本語で迷いやすい。
ペットボトルの水を買いました。
これは日常的には、
I bought a plastic bottle of water.
と言える。
また、
空のペットボトルを捨ててください。
なら、
Please throw away the empty plastic bottle.
のように言える。
一方で、環境や素材について説明する文なら、
PET bottles can be recycled.
PETボトルはリサイクルできます。
のように PET bottles を使うこともできる。
つまり、
普通の会話で容器を言う → plastic bottle
素材・リサイクルの話をする → PET bottle
と整理すると使いやすい。
よく使う形で覚える
「ペットボトル」まわりの英語は、次の形で覚えておくとよい。
plastic bottle
ペットボトル・プラスチック製ボトル
a plastic bottle of water
ペットボトルの水
an empty plastic bottle
空のペットボトル
PET bottle
PET素材で作られたボトル
recycle PET bottles
PETボトルをリサイクルする
日本語の「ペットボトル」をそのまま音で英語に戻すのではなく、 何を伝えたいのかに応じて表現を選びたい。
まとめ
日本語の「ペットボトル」は、 日常生活の中でごく自然に使われる言葉である。
日常的に英語で容器を指すなら、
plastic bottle
が使いやすい。
一方で、
PET bottle
という表現も英語に存在し、 PETという素材やリサイクルについて話す場面では使うことができる。
日本語の「ペットボトル」は、 英語由来の素材名の略称が、 日本語の中で身近な物の名前として定着した語である。
和製英語やカタカナ語を見るときは、 英語では何と言えば自然なのか と同時に、 日本語がその語をどのように日常の中へ取り込み、意味づけたのか を見ることが大切である。