塾長ノート

チャックは英語で zipper

英語らしい音の語が、日本語から生まれる

日本語では、

かばんのチャックを閉める
ズボンのチャックが開いている
ポーチのチャックが壊れた

のように、「チャック」という言葉を自然に使う。

カタカナで書かれるため、 いかにも英語から来た言葉のように感じられる。

しかし、「チャック」は英語でそのまま使う基本語ではない。

英語で、服やかばんについている開閉用の留め具を表すなら、 アメリカ英語では、

zipper

を使うのが基本である。

そして面白いことに、日本語の「チャック」は、 単純に英語を間違えて取り入れた言葉というより、 日本語の 巾着(きんちゃく) と関わる語として定着したとされている。

アメリカ英語では zipper

「チャック」を英語で言いたいとき、 まず覚えておきたいのは zipper である。

zipper
チャック・ファスナー

たとえば、

The zipper on my bag is broken.
かばんのチャックが壊れています。
Please close your zipper.
チャックを閉めてください。
This jacket has a front zipper.
このジャケットには前にチャックが付いています。

のように言える。

服、かばん、ポーチなどに付いているものを日常的に言うなら、 zipper が使いやすい。

イギリス英語では zip

イギリス英語では、 zip がよく使われる。

zip
チャック・ファスナー:主にイギリス英語

たとえば、

The zip on my coat is broken.
コートのチャックが壊れています。

のように言える。

ざっくり整理すると、

zipper:主にアメリカ英語
zip:主にイギリス英語

と考えておけばよい。

英作文や日常会話でまず一語を使えるようにするなら、 zipper を押さえておくと分かりやすい。

fastener は少し広い語

日本語では、

ファスナー

という呼び方もよく使う。

英語にも fastener という語はある。

ただし、英語の fastener は、 「何かを留めるもの」という広い意味を持ち、 チャックだけを指すとは限らない。

fastener
留め具

たとえば、ボタンやフック、スナップ、ジッパーなども、 広い意味では fastener の一種である。

そのため、日本語でいう「チャック」をはっきり指したいなら、

zipper
zip

の方が使いやすい。

「チャック」は巾着から生まれたとされる

「チャック」の面白さは、 英語の単語をそのまま借りた語とは言いにくいところにある。

日本では、1927年に尾道で、 ファスナーを 「チャック印」 として販売したことが、 「チャック」という呼び名の定着につながったとされている。

そして、この「チャック」は、

巾着(きんちゃく)

をもじった名前だと説明されている。

巾着は、ひもを引いて口を閉じる袋である。 一方、チャックも、開いている口を閉じるための道具である。

つまり、日本語では、 新しく入ってきた道具を、 すでに身近にあった「巾着」と重ねながら名づけたことになる。

ここには、単なる英語の借用とは違う、 日本語側の連想と再構成が見える。

英語由来に見えて、日本語から生まれた語

これまで扱ってきた、

ノートパソコン
ガソリンスタンド
フライドポテト

などは、英語由来の要素が日本語の中で組み合わさった言葉だった。

一方、「チャック」は少し違う。

カタカナで書かれ、外来語のように見えるが、 その成立には日本語の「巾着」が関わっている。

巾着

チャック印

チャック

つまり、「チャック」は、 外国から入ってきた道具に対して、 日本語話者が日本語の感覚から新しく名づけた語として見ることができる。

カタカナ語だからといって、 すべてが英語からそのまま借りられた語とは限らないのである。

日本語ではチャック・ファスナー・ジッパーが並ぶ

日本語では、

チャック
ファスナー
ジッパー

のいずれも見かける。

これらは、日常的にはかなり近いものを指して使われる。

ただし、少し印象の違いもある。

「チャック」は、かばんやズボンなどについて日常的に使いやすい。 「ファスナー」は、衣服や製品の説明にも使われやすい。 「ジッパー」は、衣類やファッションの文脈で見かけることがある。

日本語は、一つの道具に対して複数の呼び名を取り込み、 文脈や印象によって使い分けられる語彙を持つようになった。

ここでも、外国語をただそのまま受け取るのではなく、 日本語の中で並べ直し、使い分ける動きが見える。

「英語では通じない」だけでは見えないもの

英語学習としては、

チャック → zipper / zip

と覚えることが必要である。

しかし、「チャック」は英語ではないから変な日本語だ、 と言って終わらせるのは惜しい。

日本語は、新しく入ってきた留め具を、 日本にすでにあった「巾着」という物のイメージと結びつけ、 「チャック」という呼び名を定着させた。

そこには、 外来の道具を自分たちの生活や語彙の中で理解し直す働きが表れている。

外来語やカタカナ語は、 単なる正誤問題ではなく、 日本語が外の世界をどのように受け入れ、名前を与えてきたのかを見る材料になる。

英作文・英会話での注意

英作文や英会話では、次のような日本語で迷いやすい。

かばんのチャックが壊れました。

アメリカ英語を基準にするなら、

The zipper on my bag is broken.

と言える。

また、

ジャケットのチャックを閉めてください。

なら、

Please zip up your jacket.

が使いやすい。

zip up は、 チャックを上げて閉めるという意味で使える。

Zip up your coat. It's cold outside.
コートのチャックを閉めて。外は寒いよ。

よく使う形で覚える

「チャック」まわりの英語は、 次の形で覚えておくと使いやすい。

zipper
チャック・ファスナー:主にアメリカ英語
zip
チャック・ファスナー:主にイギリス英語
the zipper on my bag
かばんのチャック
zip up a jacket
ジャケットのチャックを閉める
a broken zipper
壊れたチャック

日本語の「チャック」を英語にするときは、 音をそのまま移すのではなく、 zipperzip を使うとよい。

まとめ

日本語の「チャック」は、 服やかばんの開閉用の留め具を表す自然な言葉である。

英語で表すなら、

zipper:主にアメリカ英語
zip:主にイギリス英語

を使う。

そして、日本語の「チャック」は、 英語をそのまま借りた語というより、 「巾着」をもじった商品名から定着した呼び名とされている。

カタカナで書かれているからといって、 必ずしも元の形が英語にあるとは限らない。

和製英語やカタカナ語を見るときは、 英語では何と言えば自然なのか と同時に、 日本語が新しい物や文化をどう理解し、どんな名前を与えたのか を見ることが大切である。

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