日本語では、
プリントをホッチキスで留める
ホッチキスの針が切れた
ホッチキスを貸してください
のように、「ホッチキス」という言葉を自然に使う。
しかし、英語で紙を針で留める文房具を表すなら、
stapler
を使う。
Can I borrow your stapler?
ホッチキスを借りてもいいですか。
では、日本語の「ホッチキス」はどこから来たのだろうか。
実は「ホッチキス」は、英語の一般的な道具名をそのまま借りた語ではない。 日本に輸入された製品に記されていた名前が、 道具そのものの呼び名として広がったものだとされている。
つまり今回は、商品名が日本語の日常語として定着した例を見ることになる。
英語では stapler
英語で「ホッチキス」を表す基本語は、 stapler である。
stapler
紙を針で留める道具・ホッチキス
たとえば、
Where is the stapler?
ホッチキスはどこですか。
I stapled the papers together.
私は紙をホッチキスで留めました。
Please staple these pages together.
これらのページをホッチキスで留めてください。
のように使える。
日本語では道具の名前として「ホッチキス」を使うが、 英語では、
stapler:ホッチキスという道具
staple:ホッチキスで留める
という形で覚えると使いやすい。
針は staple
「ホッチキスの針」は、英語では staple と言う。
staple
ホッチキスの針
複数の針を言う場面では、
staples
となる。
I need more staples.
ホッチキスの針がもっと必要です。
This stapler is out of staples.
このホッチキスは針が切れています。
日本語では、
ホッチキス
ホッチキスの針
のように、道具名を中心に表現する。
英語では、
stapler
staples
という近い形の語で、道具と針を分けて表している。
「ホッチキス」は製品名から広がった
日本で「ホッチキス」という呼び名が広がった背景には、 明治時代に輸入されたアメリカ製の製品がある。
その製品には、
HOTCHKISS No.1
と記されていた。
当時、まだこの道具の一般的な日本語名が十分に定着していなかった中で、 製品に書かれていた「HOTCHKISS」が、 道具そのものを呼ぶ名前として使われるようになったと考えられている。
つまり、
製品に表示された名前
↓
その道具を呼ぶ名前
↓
日本語の日常語として定着
という流れである。
日本語話者が「ホッチキス」と言うとき、 もはや特定の会社の商品を意識しているわけではない。
紙を針で留める文房具全体を表す、普通の言葉として使っている。
カタカナ語は英語の一般名とは限らない
「ホッチキス」はカタカナで書かれるため、 英語でも同じ名前で呼ばれているように感じられる。
しかし、実際には、
日本語:ホッチキス
英語:stapler
となる。
ここで大切なのは、 カタカナで書かれた語が、必ずしも英語の一般的な言い方をそのまま表しているわけではないということである。
カタカナ語の中には、
英語からそのまま近い意味で入った語
英語由来の要素を日本語で組み合わせた語
商品名や固有名から一般化した語
がある。
「ホッチキス」は、このうち、 商品名が日本語の一般的な道具名として定着した例として見ることができる。
名前は、物の受け入れ方と一緒に広がる
新しい道具が社会に入ってくるとき、 私たちはその道具だけでなく、 その呼び名も同時に受け入れることがある。
「ホッチキス」は、 紙を簡単に綴じられる新しい文房具が広がる過程で、 製品に付いていた名前が、そのまま日本語の道具名として根づいた例である。
これは単に、
日本人が英語を間違えて覚えた
という話ではない。
新しい物が生活に入り込むとき、 どの名前で覚えられ、どの名前が残っていくのかという話である。
日本語の中では、「ホッチキス」という語が、 その道具の身近さと一緒に定着したのである。
日本語には「ステープラー」もある
もちろん、日本語でも、
ステープラー
という呼び方を見ることはある。
商品分類や文具の説明では、 英語の stapler に近い「ステープラー」が使われることもある。
しかし、日常会話では、
ホッチキスを取って
ホッチキスで留めて
の方が、多くの日本語話者にとって自然である。
ここでも、日本語の中でどの語が日常語として根づいたのかが見えてくる。
ステープラー:道具の分類名・説明語としても見かける
ホッチキス:日常的な呼び名として強く定着している
同じ道具に複数の呼び名があり、 場面によって自然さが変わるのも、外来語のおもしろいところである。
英作文・英会話での注意
英作文や英会話では、次のような日本語で迷いやすい。
ホッチキスを貸してくれますか。
これは、
Can I borrow your stapler?
と言える。
また、
これらの紙をホッチキスで留めてください。
なら、
Please staple these papers together.
が使いやすい。
さらに、
ホッチキスの針がありません。
なら、
We are out of staples.
のように言える。
よく使う形で覚える
「ホッチキス」まわりの英語は、 次の形で覚えておくと使いやすい。
stapler
ホッチキス
staple
ホッチキスの針 / ホッチキスで留める
staples
ホッチキスの針
borrow a stapler
ホッチキスを借りる
staple papers together
紙をホッチキスで留める
be out of staples
ホッチキスの針が切れている
日本語の「ホッチキス」を音のまま英語に移すのではなく、 道具は stapler、針や留める動作は staple と整理しておくとよい。
まとめ
日本語の「ホッチキス」は、 紙を針で留める文房具を表す自然な言葉である。
英語で表すなら、
stapler
を使う。
また、
staple:ホッチキスの針 / ホッチキスで留める
staples:ホッチキスの針
も一緒に押さえておきたい。
日本語の「ホッチキス」は、 輸入された製品に記されていた HOTCHKISS という名前が、 道具そのものの呼び名として広がり、日常語として定着したものとされている。
カタカナ語を見るときは、 英語では何と言えば自然なのか を学ぶと同時に、 日本語ではどのような名前が、どのような経緯で身近な語として残ったのか を見ることが大切である。