日本語では、
友達とカラオケに行く
カラオケで好きな曲を歌う
一人でカラオケを楽しむ
のように、「カラオケ」という言葉を日常的に使う。
これまで見てきた「コンセント」や「モーニングコール」のような語では、 日本語では自然に使える言葉でも、 英語にすると別の表現を選ぶ必要があった。
しかし、「カラオケ」は少し事情が違う。
英語でも、
karaoke
を使う。
We went to a karaoke bar after dinner.
私たちは夕食のあと、カラオケ店に行きました。
She loves karaoke.
彼女はカラオケが大好きです。
日本語で生まれた「カラオケ」という言葉が、 娯楽の形とともに英語の中へ入り、 英語の語としても使われるようになったのである。
英語でも karaoke を使う
英語の karaoke は、 録音された伴奏に合わせて歌う娯楽を表す語である。
karaoke
カラオケ・録音された伴奏に合わせて歌う娯楽
たとえば、
We sang karaoke at the party.
私たちはパーティーでカラオケをしました。
My friends and I went to a karaoke bar last night.
友達と私は昨夜、カラオケ店に行きました。
They bought a karaoke machine for their home.
彼らは自宅用にカラオケ機器を買いました。
のように使える。
つまり、「カラオケ」を英作文で表したいときに、 無理に別の英語へ言い換える必要はない。
カラオケをする
sing karaoke / do karaoke
カラオケ店
karaoke bar / karaoke place
カラオケ機器
karaoke machine
のように、 karaoke を中心に表現すればよい。
karaoke は「空のオーケストラ」から生まれた
「カラオケ」という語は、 日本語の中で作られた言葉である。
一般に、この語は、
空(から):中身がない、空である
オケ:オーケストラの短縮
が組み合わさったものと説明される。
カラ + オケ
空のオーケストラ
ここでいう「空」とは、 音楽そのものがないという意味ではない。
伴奏は流れているが、 そこに生身の歌い手や演奏者がそろっているわけではない。 とくに、歌う人が自分で声を入れられるように、 伴奏だけが用意されている状態を表している。
つまり、「カラオケ」という言葉は、
演奏の場はあるが、歌う部分は空いている
その空いた場所に、自分の声を入れる
という娯楽のしくみを、非常に短い語で表している。
今ではあまり意識せずに使っている言葉だが、 語の成り立ちを見ると、 カラオケという遊び方そのものが名前の中に入っていることが分かる。
英語由来の要素を含む日本語が、英語へ入っていく
「カラオケ」が面白いのは、 単純に日本語だけで作られた語ではないという点である。
「カラ」は日本語だが、 「オケ」は「オーケストラ」の短縮である。 そして「オーケストラ」は、もともと英語の orchestra と関係する外来語である。
すると、「カラオケ」は、
英語由来の orchestra
↓
日本語でオーケストラ/オケとして使われる
↓
「空」と結びついてカラオケになる
↓
karaoke として英語でも使われる
という流れを持っている。
ここでは、英語の語がそのまま日本語に入り、 そのまま英語へ戻ったわけではない。
日本語の中で短くされ、 日本語の「空」と組み合わされ、 新しい娯楽の名前として形を整えたうえで、 karaoke という一つの語として英語へ入っている。
外来語は、ある言語から別の言語へ移るとき、 ただコピーされるだけではない。
受け入れた側の言語の中で短くされたり、 別の語と組み合わされたり、 新しい文化や道具の名前になったりする。
「カラオケ」は、 その動きが非常に分かりやすく見える言葉である。
英語に入ると、日本文化を指すだけの語ではなくなる
karaoke は日本語から英語へ入った語だが、 英語の中では、 必ずしも「日本で行うカラオケ」だけを指すわけではない。
英語話者が自分たちの町の店で歌う場合でも、 友人の家でカラオケ機器を使う場合でも、 karaoke と言うことができる。
There's a karaoke bar near my office.
職場の近くにカラオケのできる店があります。
We had a karaoke night at home.
私たちは家でカラオケの夜を楽しみました。
日本から入った語でありながら、 英語の中でも日常的な娯楽を表す語として使われているのである。
これは、日本の食べ物や衣服の名前が、 日本特有の物を説明するために英語へ入る場合とは少し違う。
カラオケは、 物の名前だけでなく、
音楽を流し、自分で歌って楽しむという遊び方
ごと広がった。
そのため、英語の中でも karaoke は特別な説明を必要とせず、 一つの娯楽の名前として使われている。
カラオケ店やカラオケボックスはどう表すか
「カラオケ」そのものは英語でも karaoke でよい。
ただし、日本語でカラオケの周辺に使う表現まで、 すべてそのまま英語にできるとは限らない。
たとえば、日本語では、
カラオケ店
カラオケボックス
カラオケルーム
のような言葉を使う。
英語で店を表すなら、
karaoke bar
カラオケのできるバー・店
が使いやすい。
We found a karaoke bar downtown.
私たちは繁華街でカラオケ店を見つけました。
また、日本のカラオケボックスのような、 友人同士で使う個室を説明するなら、
private karaoke room
個室のカラオケルーム
と言えば分かりやすい。
We booked a private karaoke room for two hours.
私たちは個室のカラオケルームを2時間予約しました。
このように、 中心となる karaoke は英語でもそのまま使えるが、 その周りの施設名や利用のしかたは、 英語の中で自然な語を補って表す必要がある。
日本語から英語へ入った言葉を見る面白さ
直前まで扱ってきた「和製英語から英単語」では、 英語らしく見える日本語が、 英語では別の形になる例を見てきた。
モーニングコール → wake-up call
オーダーメイド → custom-made / made-to-order
ベビーカー → stroller / pushchair
そこでは、 英語由来の要素を日本語が取り込み、 日本語の中で独自の言葉として組み立て直していることが分かった。
一方、「カラオケ」は、 その先の動きを見せてくれる。
日本語の中で生まれた語が、
その語の表す文化や遊び方とともに、
英語の中へ入っていく。
英語を学ぶとき、 日本語に入ってきた英語ばかりに目が向きやすい。
しかし、言葉の移動は一方向ではない。 日本語で生まれた語が、 英語の中で必要とされ、 英語話者にも使われることがある。
そのとき、日本語は単に英語を受け取る側ではなく、 新しい物事や文化の名前を、 別の言語へ渡していく側にもなる。
karaoke は、 そのことを身近に感じさせてくれる語である。
英作文・英会話での使い方
英作文や英会話では、 「カラオケ」を無理に説明的に訳そうとせず、 karaoke をそのまま使えばよい。
たとえば、
私はカラオケが好きです。
なら、
I like karaoke.
I love karaoke.
と言える。
また、
昨日、友達とカラオケに行きました。
なら、
I went to a karaoke bar with my friends yesterday.
が分かりやすい。
「家でカラオケをした」なら、
We sang karaoke at home.
と言える。
「カラオケルームを予約した」と言いたい場合は、
We booked a private karaoke room.
のように、 private karaoke room とすれば状況が伝わりやすい。
日本語と英語で同じ語を使えるからこそ、 その語の周りにどのような動詞や名詞を置くかを覚えておくと、 実際の会話で使いやすくなる。
よく使う形で覚える
「カラオケ」まわりの英語は、 次の形で整理しておくと使いやすい。
karaoke
カラオケ
like karaoke / love karaoke
カラオケが好きである
sing karaoke
カラオケで歌う
a karaoke bar
カラオケのできる店・バー
a karaoke machine
カラオケ機器
a karaoke night
カラオケを楽しむ夜・カラオケイベント
a private karaoke room
個室のカラオケルーム
日本語の「カラオケ」を英語にするときは、 まず karaoke がそのまま使えることを押さえたうえで、 店、機器、個室などを表す語を組み合わせていきたい。
まとめ
日本語の「カラオケ」は、 英語でも、
karaoke
と言う。
この語は、
空(から)+ オケ(オーケストラの短縮)
から生まれた日本語であり、 伴奏に合わせて自分で歌う娯楽を表している。
英語では、
karaoke bar
karaoke machine
karaoke night
のような形でも使われる。
「カラオケ」が面白いのは、 英語由来の要素を含む日本語が、 日本語の中で新しい娯楽の名前になり、 その後、karaoke として英語の中でも使われるようになった点である。
外来語を見るとき、 日本語が外国語から何を受け取ったのかだけを見る必要はない。
日本語の中で生まれた言葉が、 文化や生活の形とともに、 別の言語へ渡っていくこともある。
karaoke は、 日本語と英語のあいだで言葉が行き来しながら、 新しい意味と文化を運んでいくことが見える語なのである。