英語では、 see のあとに、 人と動作を続けて置くことがある。
I saw him cross the street.
私は彼が通りを渡るのを見ました。
I saw him crossing the street.
私は彼が通りを渡っているのを見ました。
この二つは、 日本語にすればどちらも 「彼が通りを渡るのを見た」 と訳せることがある。
しかし、 英語では同じ場面の切り取り方ではない。
一つ目では、 cross という原形が使われている。
二つ目では、 crossing という -ing 形が使われている。
この違いは、 単に「原形か進行形か」を覚える話ではない。
話し手が、 目にした出来事を ひとまとまりの動作 として捉えるのか、 それとも 動作の途中の場面 として捉えるのか、 という違いである。
see 人 do は、動作をひとまとまりとして見る
まず、 次の文を見てみよう。
I saw him cross the street.
私は彼が通りを渡るのを見ました。
この文では、 him が通りを渡る人であり、 cross the street が その人の動作を表している。
see 人 do の形では、 その動作を、 一つの出来事として捉える。
たとえば、 歩道に立っていて、 彼が道路の反対側へ渡っていく様子を目にしたなら、
I saw him cross the street.
と表しやすい。
ここで大切なのは、 原形の cross が、 「過去」や「現在」を示しているわけではないことである。
時制を担っているのは、 文の中心動詞である saw である。
cross は、 「彼が何をするのを見たのか」 を示している。
同じ形は、 see 以外の知覚動詞でも現れる。
I saw her enter the room.
私は彼女が部屋に入るのを見ました。
We heard the door close.
私たちはドアが閉まる音を聞きました。
これらの文では、 「入る」「閉まる」という出来事が、 まとまりとして捉えられている。
学校文法では、 see + 目的語 + 動詞の原形 という形で覚えることが多い。
もちろん、 形を覚えることも必要である。
ただし、 なぜ原形になるのかを考えるときには、 見たり聞いたりした出来事を、ひとまとまりとして示している と捉えると分かりやすい。
see 人 doing は、動作の途中の場面を見る
一方、 次の文では、 crossing が使われている。
I saw him crossing the street.
私は彼が通りを渡っているのを見ました。
-ing 形が使われると、 話し手の目に入ったのは、 動作が進行している場面である。
たとえば、 ふと窓の外を見たときに、 彼がちょうど道路を渡っている最中だった。
そのような場面なら、
I saw him crossing the street.
が自然である。
この文だけでは、 彼が最後まで渡りきったかどうかは、 話の中心ではない。
話し手が伝えているのは、 渡っているところを目にした ということである。
I saw her talking to Mr. Brown.
私は彼女がブラウン先生と話しているところを見ました。
I heard someone crying.
私は誰かが泣いているのを聞きました。
ここでは、 「話す」「泣く」という行為が、 続いている場面として捉えられている。
日本語でも、
彼が道路を渡るのを見た
彼が道路を渡っているところを見た
と言い分けることができる。
英語の cross と crossing の違いは、 この感覚に近い。
ただし、 原形なら必ず動作の最初から最後まで見た、 -ing なら絶対に最後を見ていない、 と機械的に決めつけるのは避けたい。
基本となる違いは、 出来事全体として示すか、進行中の場面として示すか である。
原形と -ing は、英作文でどう選ぶか
英作文でこの二つを使い分けるときは、 日本語の訳語だけで選ばない方がよい。
自分がどのような場面を伝えたいのかを考える。
I saw Tom leave the station.
私はトムが駅を出ていくのを見ました。
これは、 トムが駅を出るという出来事を、 ひとまとまりとして述べている。
I saw Tom leaving the station.
私はトムが駅を出ていくところを見ました。
こちらは、 駅を出ていく途中のトムを目にした、 という場面を描いている。
音についても同じように考えられる。
I heard her sing a song.
私は彼女が一曲歌うのを聞きました。
一曲を歌うという出来事を、 まとまりとして聞いたという印象になる。
I heard her singing in her room.
私は彼女が部屋で歌っているのを聞きました。
こちらは、 歌声が聞こえてきた場面を述べている。
また、 see や hear のような知覚動詞のあとで、 動作を原形で続けるときは、 通常、 to を置かない。
I saw him cross the street.
× I saw him to cross the street.
「彼が渡るのを見た」と言いたいときは、 see 人 do または see 人 doing のどちらの場面なのかを考える。
文型の記号だけで見れば、 him のあとに 動詞が続いている少し不思議な形に見える。
しかし、 意味から見れば、
見た人:I
見えた相手:him
その相手がしていたこと:cross / crossing the street
という構造である。
「人を見た」のではなく、 人がある動作をする場面を見た という文なのである。
まとめ
I saw him cross the street. と I saw him crossing the street. は、 どちらも 「彼が通りを渡るのを見た」 と訳せることがある。
しかし、 英語での場面の捉え方は異なる。
I saw him cross the street.
彼が通りを渡るという出来事を、ひとまとまりとして見た。
I saw him crossing the street.
彼が通りを渡っている途中の場面を見た。
原形は、 見たり聞いたりした動作を、 一つの出来事として示す。
-ing 形は、 その動作が進行している場面を示す。
ここで大切なのは、 日本語で一つの訳にまとめてしまう前に、 英語が 出来事全体 と 途中の場面 をどう分けているかを見ることである。
英文法は、 ただ 「知覚動詞のあとは動詞の原形」 と形を覚えるだけのものではない。
同じような出来事でも、 どの部分に目を向けて文にするのかによって、 英語の形は変わる。
see 人 do と see 人 doing の違いは、 英語が出来事をどのように切り取って伝えるのかを知る、 とても分かりやすい例なのである。