塾長ノート

make him go と force him to go はなぜ形が違うのか

同じ「行かせる」でも、使役の伝え方は同じではない

英語で、 「人に何かをさせる」と言いたいとき、 次のような文を使うことがある。

My mother made me clean my room.
母は私に自分の部屋を掃除させました。
The teacher forced me to stay after school.
先生は私を無理に放課後残らせました。

どちらも、 日本語では 「人に〜させる」 と訳すことができる。

ところが、 英語の形を見ると、 後ろの動詞の置き方が違う。

make + 人 + 動詞の原形
force + 人 + to do

make me clean とは言えるが、 make me to clean とは言わない。

一方で、 force me to stay とは言えるが、 force me stay とは言わない。

日本語では同じように 「させる」 と訳せるのに、 なぜ英語では形が変わるのだろうか。

ここでは、 make 人 doforce 人 to do を比べながら、 英語では、 動詞ごとに後ろへ続く形が決まっていることを考えたい。

make 人 do は、人に動作を起こさせる

まず、 make を使った文を見る。

My mother made me clean my room.
母は私に自分の部屋を掃除させました。

この文では、

my mother:掃除をさせる人
me:掃除をする人
clean my room:実際に起こる動作

という関係になっている。

make のあとでは、 動作を表す語は to をつけない動詞の原形 で置かれる。

make + 人 + 動詞の原形
人に〜させる

たとえば、

The movie made me cry.
その映画は私を泣かせました。
His question made me think.
彼の質問は私に考えさせました。
Our teacher made us write the answer again.
先生は私たちに答えをもう一度書かせました。

のように使える。

ここで大切なのは、 make の主語が、 必ずしも命令する人とは限らないことである。

映画が人を泣かせたり、 質問が人に考えさせたりすることもできる。

つまり、 make 人 do は、 誰かが強く命令する場合だけではなく、 何かが原因となって、 人にある動作や反応を起こさせるときにも使える。

That song made me smile.
その歌を聞いて、私は笑顔になりました。

この文で、 歌が私に 「笑え」 と命令しているわけではない。

歌がきっかけとなって、 私に笑顔という反応が生まれたのである。

make は、 「無理やりさせる」 と訳せる場面もあるが、 中心にあるのは、 ある原因によって、相手に動作や状態を生じさせる という関係である。

force 人 to do は、圧力によって行動させる

次に、 force を使った文を見る。

The teacher forced me to stay after school.
先生は私を無理に放課後残らせました。

force は、 相手が進んでしようとしていないことを、 力や圧力によってさせる場合に使いやすい。

force + 人 + to do
人に無理に〜させる

たとえば、

They forced him to sign the document.
彼らは彼に無理に書類へ署名させました。
The heavy rain forced us to cancel the game.
大雨のため、私たちは試合を中止せざるを得ませんでした。
His injury forced him to leave the team.
彼はけがのため、チームを離れざるを得ませんでした。

一つ目の文では、 人が人に圧力をかけている。

しかし、 二つ目や三つ目の文では、 主語は大雨やけがである。

雨やけがが命令するわけではないが、 その状況のために、 別の選択ができなくなっている。

そのような 外からの圧力によって、行動を避けられなくする 感覚が、 force にはある。

比べてみると、

My father made me apologize.
父は私に謝らせました。
My father forced me to apologize.
父は私に無理やり謝らせました。

となる。

どちらも、 私が謝るという結果は同じである。

ただし、 force の方が、 私が謝りたくないのに圧力によって謝らされた、 という感じを前面に出しやすい。

もっとも、 make も文脈によっては 「無理にさせる」 と訳される。

そのため、 make は弱い使役、force は強い使役 とだけ覚えるのでは足りない。

make は動作を生じさせることに焦点があり、 force は圧力によって行動を避けられなくすることに焦点がある、 と見る方が使いやすい。

原形か to 不定詞かは、意味の強さだけでは決まらない

ここで、 次のように考えたくなるかもしれない。

make は普通に「させる」から動詞の原形
force は強く「無理にさせる」から to 不定詞

しかし、 英語の形は、 そのような単純な強弱だけで決まるわけではない。

たとえば、 let は、 「人が〜するのを許す」 という意味で使われる。

My parents let me go out with my friends.
両親は私が友達と出かけることを許してくれました。

これは強制ではない。 むしろ相手がしたいことを認める表現である。

それでも、 let のあとでは、 to go ではなく go を使う。

一方、 want は、 相手に圧力をかける語ではないが、 後ろには to do が続く。

I want him to go with me.
私は彼に一緒に行ってほしいです。

整理すると、

make + 人 + do:人に〜させる
let + 人 + do:人が〜するのを許す
force + 人 + to do:人に無理に〜させる
want + 人 + to do:人に〜してほしい

となる。

ここから分かるのは、 動詞の原形を使うか、to 不定詞を使うかは、 日本語の訳だけから自由に決められるものではない ということである。

それぞれの動詞が、 どのような意味を持ち、 どのような形を後ろに求めるのかを、 セットで身につける必要がある。

なお、 make を受け身にすると、 次のように to が現れる。

The teacher made me stay after school.
先生は私を放課後残らせました。
I was made to stay after school.
私は放課後残らされました。

能動態では make 人 do、 受け身では be made to do となる。

これも、 「強い意味だから to がつく」 のではなく、 英語の構文として決まっている形である。

英作文では、「させる」の中身を考える

日本語の 「〜させる」 を英語にするときは、 まず、 何がどのように相手の行動を生じさせたのかを見るとよい。

たとえば、

その知らせは彼女を泣かせました。

なら、 何かを強制したというより、 知らせが原因となって涙が生じたので、

The news made her cry.

が自然である。

一方、

大雨のため、私たちは試合を中止せざるを得ませんでした。

なら、 大雨によって他の選択ができなくなったので、

The heavy rain forced us to cancel the game.

と表せる。

また、

父は私に謝らせました。

なら、 単に謝らせたという結果を述べる場合には、

My father made me apologize.

と言える。

本人の抵抗を押し切って、 無理に謝罪させたことを強調するなら、

My father forced me to apologize.

が合いやすい。

そして、 形にも注意する。

make me apologize
force me to apologize

make の後ろでは動詞の原形、 force の後ろでは to 不定詞 を使う。

日本語では、 どちらも 「謝らせる」 「行かせる」 「中止させる」 のように一つの形で表せる。

しかし英語では、 原因となるものが動作を生じさせたのか、 圧力によって行動を避けられなくしたのかによって、 選ぶ動詞が変わり、 それに応じて後ろの形も変わる。

文型や構文を学ぶときに大切なのは、 記号を振ることだけではない。

この動詞は、どのような意味で、 後ろにどのような形を求めるのか を見ることである。

make him goforce him to go の違いは、 日本語の 「させる」 だけでは見えにくい、 英語の意味と形の結びつきを示している。

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