塾長ノート

It is difficult to answer this question. はなぜ it で始まるのか

長い主語を後ろに置く英語の語順

英語を学んでいると、 次のような文によく出会う。

It is difficult to answer this question.
この質問に答えるのは難しい。

この文の it は、 いったい何を指しているのだろうか。

「それは難しい」と訳す文であれば、 it は 何か具体的な内容を指しているように見える。

しかし、この文で難しいのは、 it そのものではない。

to answer this question
この質問に答えること

が難しいのである。

では、なぜ英語は最初から To answer this question is difficult. と言わず、 It is difficult to answer this question. という形をよく使うのだろうか。

ここには、 英語が長い内容を後ろへ置こうとする語順の傾向が関わっている。

to answer this question も主語になれる

まず確認しておきたいのは、 to answer this question のような to不定詞のまとまりも、 文の主語になることができるということである。

To answer this question is difficult.
この質問に答えることは難しい。

この文では、

To answer this question = 主語
is difficult = 難しい

という関係になっている。

つまり、 意味だけを見れば、

To answer this question is difficult.
It is difficult to answer this question.

は、 どちらも 「この質問に答えるのは難しい」 という内容を表すことができる。

同じように、

To learn a foreign language takes time.
外国語を学ぶことには時間がかかる。

のように、 動作を表すまとまり全体を 主語として置くこともできる。

ただし、 主語が長くなるほど、 文の最初で多くの情報を処理しなければならなくなる。

To answer a difficult question in front of many people
is not easy.

このような文も文法的には作れるが、 読み手や聞き手は、 かなり長い主語を受け取ってから、 ようやく is not easy にたどり着く。

そこで英語では、 長くなりやすい内容を後ろへ送り、 文の骨組みを先に示す形がよく用いられる。

英語は「重い」内容を後ろへ置きやすい

英語では、 短い要素を前に置き、 長く複雑な要素を後ろへ置く傾向がある。

これを、 文末重心 という考え方で説明することができる。

たとえば、

To answer this question is difficult.

では、 文の最初に to answer this question という内容が置かれている。

一方、

It is difficult to answer this question.

では、 まず It is difficult という短い骨組みが提示され、 そのあとで、 何が難しいのかが説明される。

It is difficult

to answer this question.

日本語にすると、 どちらも 「この質問に答えるのは難しい」 となることが多い。

しかし英語の語順では、 「難しい」という評価を先に置き、 評価の対象となる長い内容を後ろに回している。

とくに、 不定詞の中身が長くなると、 この形の利点がわかりやすい。

It is difficult to explain this idea clearly
to students who are learning English for the first time.
初めて英語を学ぶ生徒に、この考えを明確に説明するのは難しい。

この文を To explain ... is difficult. で始めることもできるが、 最初に非常に長い主語を置くことになる。

It is difficult ... で始めれば、 文の大枠が早い段階で見え、 後ろに詳しい内容を続けやすくなる。

形式主語の構文は、 単なる書き換え問題のための形ではない。 英語が情報を伝えやすい順番に並べるための形なのである。

この it は具体的な「それ」を指していない

It is difficult to answer this question.it は、 日本語の「それ」に対応するものとして 具体的な何かを指しているわけではない。

文法上、 英語の文には主語の位置が必要になる。 その位置にまず it を置き、 内容の中心である不定詞のまとまりを後ろに置いている。

It is difficult to answer this question.

難しいのは、to answer this question の部分

学校文法では、 この it形式主語、 後ろの不定詞を 真主語 と呼ぶことが多い。

ただ、名称を覚えること以上に大切なのは、 it を日本語の「それ」として訳そうとしない ことである。

It is important to read every day.
毎日読むことは大切です。
It is dangerous to swim here.
ここで泳ぐのは危険です。
It was fun to talk with you.
あなたと話せて楽しかったです。

これらの文で、 it を 「それは」と一語ずつ訳す必要はない。

何が大切なのか、 何が危険なのか、 何が楽しかったのかは、 後ろの to do の部分が示している。

また、 誰にとって難しいのかを示したい場合には、

It is difficult for me to answer this question.
私にとって、この質問に答えるのは難しい。

のように、 for me を加えることができる。

ここでの for me は、 不定詞の意味上の主語を示す表現である。 of you を使う場合との違いは、 別の記事で扱った通りである。

英作文では It is ... to do を基本にする

英作文で、 「〜することは…だ」 と言いたいときは、 まず It is ... to do の形を使えるようにしておくとよい。

毎日英語を練習することは大切です。
It is important to practice English every day.
この川で泳ぐことは危険です。
It is dangerous to swim in this river.
新しい友達を作るのは楽しいです。
It is fun to make new friends.
彼にその事実を伝えるのは難しかったです。
It was difficult to tell him the truth.

この形では、 まず importantdangerousfundifficult のような評価を示し、 何についてそう言っているのかを 後ろの不定詞で表す。

もちろん、 To practice English every day is important. のような文が誤りというわけではない。

ただ、日常的な英文や英作文では、 長い内容を後ろに置く It is ... to do の方が、 文を組み立てやすく、 英語としても自然に流れやすい。

整理すると、

To answer this question is difficult.
不定詞のまとまりを主語にした形
It is difficult to answer this question.
it を主語の位置に置き、内容を後ろに送った形

である。

形式主語の it は、 わけのわからない「それ」ではない。

英語が、 長い内容をあとに置き、 文の骨組みを先に見せるために使っている 大切な仕組みである。

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