塾長ノート

She seems to be tired. はなぜ She で始まるのか

「〜のようだ」の中身が、文の先頭へ上がる

英語では、 次のような文をよく使う。

She seems to be tired.
彼女は疲れているようです。

意味はそれほど難しくない。 seem は、 「〜のように見える」「〜らしい」という判断を表す動詞である。

しかし、 文の形を少し丁寧に見ると、 不思議なところがある。

この文の主語は、 She である。

けれども、 彼女が何かを「seem している」わけではない。

彼女について本当に述べられている内容は、

She is tired.
彼女は疲れている。

であり、 seems は、 その内容全体について、 「そう見える」「そう判断される」と付け加えている。

実際、 ほぼ同じ内容は、 次のようにも表せる。

It seems that she is tired.
彼女は疲れているようです。

では、

It seems that she is tired.
She seems to be tired.

は、 どのようにつながっているのだろうか。

seem が表しているのは、She の行動ではない

まず、 seem と、 ふつうの動作を表す動詞を比べてみよう。

She opened the door.
彼女はドアを開けた。

この文では、 She は、 opened という行動をした人である。

同じように、

She tried to open the door.
彼女はドアを開けようとした。

では、 She は、 「開けようと試みた」人である。

try は、 主語が何を試みたのかを述べる動詞である。

一方で、

She seems to be tired.

She は、 seem という行動をしている人ではない。

「彼女が、疲れているように見せようとしている」という意味でもない。

この文では、 彼女は tired の意味上の相手である。

She is tired.
彼女は疲れている。

という内容に対して、

It seems that ...
どうやら〜のようだ

という判断が重なっているのである。

つまり、

She tried to be calm.
→ She は try の行為者であり、落ち着こうとした人
She seems to be calm.
→ She は calm な人であり、seem はその判断を示す

という違いがある。

表面上はどちらも、 主語 + 動詞 + to 不定詞 という形になっている。

しかし、 主語がどの動詞と意味的に結びついているのかは、 同じではないのである。

It seems that she is tired. から考える

She seems to be tired. の形を理解するときは、 まず次の文から考えると分かりやすい。

It seems that she is tired.

この文では、 she is tired が、 that 節の中にそのまま入っている。

そして、 文頭の It seems が、 「その内容はどうやら本当らしい」と判断している。

It seems

that she is tired

つまり、 疲れているのは最初から最後まで she であり、 seem が新たに別の行為者を必要としているわけではない。

これとよく似た内容を、 she を文頭に出して表した形が、

She seems to be tired.

である。

文法では、 もともと後ろの内容の中で主語になっている名詞句が、 主節の主語の位置へ上がってくるように見えることから、 このような形を 繰り上げ構文 と呼ぶ。

It seems that she is tired.

She seems to be tired.

「繰り上げ」と言っても、 実際に英作文をするときに、 頭の中で文を変形しなければならないわけではない。

大切なのは、 She seems to be tired.She は、 意味の上では be tired と結びついている、 と見抜けることである。

同じ関係は、 次の文でも見られる。

It seems that Tom knows the answer.
Tom seems to know the answer.
トムは答えを知っているようです。
It appears that she is very busy.
She appears to be very busy.
彼女はとても忙しいようです。

前者は内容全体を先に判断する形であり、 後者は話題にしたい人物を最初に置く形である。

どちらも、 断定ではなく、 見た様子や得られた情報からの判断を表している。

to be は省略されることもある

seem の後ろには、 to be + 形容詞 が来ることがある。

She seems to be tired.
彼女は疲れているようです。

ただし、 形容詞が続く場合には、 to be を置かずに、

She seems tired.

と言うこともできる。

日常的には、 こちらの短い形も非常によく使いやすい。

You seem tired.
疲れているようだね。
He seems nervous.
彼は緊張しているようです。
Everything seems fine.
すべて問題なさそうです。

一方、 後ろに動詞を続けたいときは、 to do の形が必要になる。

Tom seems to know the answer.
トムは答えを知っているようです。
She seems to understand the problem.
彼女はその問題を理解しているようです。
He seems to have forgotten the meeting.
彼は会議のことを忘れてしまったようです。

したがって、 英作文では、 次のように整理しておくと使いやすい。

seem + 形容詞
→ 状態が〜のようだ
She seems tired.
seem to do
→ 〜するようだ
She seems to understand.
It seems that + 文
→ どうやら〜のようだ
It seems that she understands.

日本語では、 どれも「〜のようだ」と訳せる。

しかし英語では、 何を文頭で話題にしたいのか、 後ろに状態を置くのか動作を置くのかによって、 文の形を選ぶことができる。

「何がそうらしいのか」を先頭に置く英語

She seems to be tired. は、 ただ seem to do という熟語を覚えれば終わり、 という文ではない。

この文では、 本来判断されている内容は、

she is tired

である。

その中の she を文頭に置くことで、 「彼女について言えば、疲れているようだ」と、 人物を話題の中心にして述べることができる。

そのため、 会話や文章の中で、 すでに特定の人物について話しているときには、

She seems tired.
She seems to know the answer.

のような形が自然に使いやすい。

一方で、 ある状況全体を受けて、 「どうやら〜らしい」と判断を示すなら、

It seems that she is tired.
It seems that something went wrong.

のような形も使える。

まとめると、

It seems that she is tired.
→ 「彼女が疲れている」という内容全体を、どうやらそうらしいと述べる
She seems to be tired.
→ she を話題の中心に置いて、疲れているようだと述べる

そして、 She seems to be tired.She は、 seem の行為者ではなく、 意味の上では be tired の主語である。

ここに、 この構文の大切な点がある。

英語の主語は、 いつも動詞の行為者になるわけではない。

文の表面では主語として前に置かれていても、 意味の上では、 後ろにある状態や動作と強く結びついていることがある。

She seems to be tired. は、 そのことを非常に分かりやすく示す文である。

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