英語では、 「英語を上手に話せたらいいのに」 のように、 今の現実とは違う願い を表したいことがある。
I wish I could speak English well.
英語を上手に話せたらいいのに。
この文を見ると、 まず気になるのは could だろう。
could は、 ふつう can の過去形 として習う。 そのため、 「英語を話せた」 という過去の話なのかと思ってしまうかもしれない。
しかし、 I wish I could speak English well. は、 過去の話ではない。 今の自分について、 「今はそうではないけれど、そうだったらいいのに」 と言っている。
つまり、 ここでの could は、 単純な過去ではなく、 現実とは違うことを仮に考える形 として使われている。
前の記事では、 If I were you, I would study harder. のように、 「もし私があなたなら」 という仮定を扱った。
今回は、 その仮定法を、 I wish ... と組み合わせて、 「そうだったらいいのに」 という願いを表す形を整理しよう。
I wish は、現実とは違う願いを表す
まず、 wish という動詞の意味を確認しよう。
wish は、 「願う」 「そうであればよいと思う」 という意味を表す。
I wish I could speak English well.
英語を上手に話せたらいいのに。
この文では、 話し手は、 現実には英語を上手に話せないと感じている。 そのうえで、 「上手に話せる自分だったらいいのに」 と願っている。
ここで大切なのは、 I wish ... が、 単なる未来の希望ではなく、 今の現実とは違うことへの願い を表しやすいという点である。
I wish I had more time.
もっと時間があればいいのに。
I wish I were taller.
もっと背が高ければいいのに。
I wish it were sunny today.
今日晴れていればいいのに。
どの文も、 今の現実とは違うことを願っている。
I wish I had more time.
→ 実際には、今あまり時間がない
I wish I were taller.
→ 実際には、今そうではないと感じている
I wish it were sunny today.
→ 実際には、今日晴れていない
つまり、 I wish + 主語 + 動詞の過去形 のような形は、 「昔そうだったらよかった」 という意味だけではない。
中学英語でまず押さえたいのは、 今の現実とは違うことを、少し距離を置いて表す ために、 過去形のような形を使うということである。
could / were は、今のことでも過去形になる
では、 なぜ I wish I can speak English well. ではなく、 I wish I could speak English well. になるのだろうか。
それは、 I wish ... の後ろで、 現実とは違うことを表すとき、 動詞を過去形のような形にするからである。
can → could
am / is / are → were
have → had
live → lived
ただし、 ここでの過去形は、 いつも「過去の時点」を表すわけではない。
I wish I could speak English well.
→ 今、英語を上手に話せたらいいのに
この could は、 「昔話せた」 という意味ではない。 今の現実とは違う能力を仮に考えている。
同じように、 were も、 今のことを表す仮定法で使われる。
I wish I were a bird.
鳥だったらいいのに。
この文も、 過去に鳥だったという意味ではない。 現実には鳥ではない人が、 「もし鳥だったらいいのに」 と言っている。
中学英語では、 I wish I were ... の形で覚えるとよい。 日常英語では was が使われることもあるが、 文法学習では、 仮定法の形として were をしっかり押さえておきたい。
ここで大切なのは、 過去形に見えるからといって、必ず過去の話とは限らない ということである。
I was a student.
→ 過去の事実
I wish I were a bird.
→ 今の現実とは違う願い
仮定法では、 動詞を過去形のようにすることで、 現実から少し離れた感じを出している。
I wish と I hope はどう違うのか
I wish ... と似た表現に、 I hope ... がある。
どちらも日本語では 「〜だといい」 のように訳されることがあるため、 混同しやすい。
しかし、 英語では、 wish と hope の使い方には違いがある。
I hope it will be sunny tomorrow.
明日晴れるといいな。
I wish it were sunny today.
今日晴れていればいいのに。
I hope ... は、 これから本当に起こる可能性があることを願うときに使いやすい。
明日の天気は、 まだ決まっていない。 晴れる可能性もある。 だから、 I hope it will be sunny tomorrow. と言える。
一方、 I wish ... は、 今の現実とは違うことを願うときに使われる。
今日が雨なら、 今この時点では晴れていない。 その現実を前提にして、 「晴れていたらいいのに」 と言うとき、 I wish it were sunny today. となる。
I hope I can speak English well someday.
いつか英語を上手に話せるようになるといいな。
I wish I could speak English well.
英語を上手に話せたらいいのに。
I hope I can ... は、 これからできるようになる可能性を見ている。
I wish I could ... は、 今はできないという現実を前提に、 「できたらいいのに」 と願っている。
そのため、 「英語を上手に話せたらいいのに」 を表すとき、 I wish I can speak English well. とはしない。
I hope I can speak English well someday.
→ いつかできるようになるといい
I wish I could speak English well.
→ 今できたらいいのに
日本語ではどちらも 「〜だといい」 と訳せることがある。 だからこそ、 英語では、 実現の可能性を願っているのか、 現実とは違うことを願っているのか を分けて考える必要がある。
仮定法は、現実との距離を表す
ここまで見ると、 If I were you と I wish I could ... は、 かなり近い考え方でできていることが分かる。
If I were you, I would study harder.
もし私があなたなら、もっと一生懸命勉強するでしょう。
I wish I could speak English well.
英語を上手に話せたらいいのに。
どちらも、 現実そのものをそのまま述べているのではない。
If I were you では、 現実には私はあなたではない。 それでも、 もしその立場ならどうするかを考えている。
I wish I could speak English well では、 今の自分は英語を上手に話せないと感じている。 それでも、 そうできる自分だったらいいのにと願っている。
つまり、 仮定法は、 現実から少し離れた場面を頭の中に作る表現 だと言える。
I wish + 主語 + 動詞の過去形
→ 今そうではないことを願う
I wish + 主語 + could + 動詞の原形
→ 今できないことを、できたらいいのにと願う
I wish + 主語 + were ...
→ 今そうではない状態を、そうだったらいいのにと願う
たとえば、 次のように考えると分かりやすい。
I wish I had more time.
→ 今もっと時間があればいいのに
I wish I could go with you.
→ あなたと一緒に行けたらいいのに
I wish I were good at math.
→ 数学が得意だったらいいのに
どの文も、 「今そうである」 と言っているわけではない。 むしろ、 今はそうではないからこそ、 その反対の状況を願っている。
仮定法を学ぶときは、 「過去形を使う」 という形だけを覚えると、 どうして今の話なのに過去形なのかが分かりにくくなる。
まずは、 過去形のような形で、現実との距離を表している と考えよう。
I wish I could speak English well. は、 ただの過去の話ではない。 今の自分と、 そうだったらいいのにと思う自分との間にある距離を、 could で表しているのである。