塾長ノート

過去形は「過去」だけを表すのか

過去の出来事と、今から離れた距離感を時制として整理する

中学英語では、 過去形 を学ぶとき、 まず「過去のことを表す形」として整理する。

I played tennis yesterday.
私は昨日テニスをしました。

She was busy last night.
彼女は昨夜忙しかったです。

この理解は、とても大切である。 過去形の基本は、 今ではなく、 過去のある時点の出来事や状態を見る ことだからである。

ただし、高校英文法へ進むと、 過去形は単に 「昔のこと」 だけでは終わらない。

If I were you, I would study harder.
もし私があなたなら、もっと一生懸命勉強するでしょう。

I wish I could speak English well.
英語を上手に話せたらいいのに。

これらの文では、 werecould が使われているが、 必ずしも「過去の話」をしているわけではない。 むしろ、今の現実とは違うことを、 少し距離を置いて表している。

つまり、過去形には、 時間的に過去を見る働き と、 今の現実から離れた感じを出す働き がある。

今回は、過去形を 「過去を表す形」 から一歩進めて、 高校英文法につながる時制の見方として整理していこう。

過去形は、過去の一点を切り取る

まず、過去形の基本から確認しよう。

I played tennis yesterday.
私は昨日テニスをしました。

この文では、 yesterday という過去の時点に注目して、 そのときに played tennis という出来事があったことを表している。

過去形は、 ざっくり言えば、 今とは切り離された過去の場面 を見る形である。

I visited Kyoto last year.
私は去年京都を訪れました。

He studied math yesterday.
彼は昨日数学を勉強しました。

We watched a movie last night.
私たちは昨夜映画を見ました。

いずれも、 last year / yesterday / last night のような過去を表す語句と相性がよい。 過去のある時点を指定して、 そこで起こったことを述べているからである。

be動詞の場合も同じである。

I was tired yesterday.
私は昨日疲れていました。

They were in the library then.
彼らはそのとき図書館にいました。

was / were は、 過去のある時点での状態を表す。 現在どうなのかではなく、 その過去の場面ではどうだったのかを見ている。

否定文や疑問文では、 一般動詞なら did を使う。

I did not play tennis yesterday.
私は昨日テニスをしませんでした。

Did you play tennis yesterday?
あなたは昨日テニスをしましたか。

ここで注意したいのは、 did が過去を表しているため、 後ろの動詞は play という原形に戻ることである。

I played tennis.
Did you play tennis?
I did not play tennis.

過去形の基本は、 「過去のこと」 でよい。 ただし、より正確には、 今から切り離された過去の場面を見ている と考えると、高校英文法へつながりやすくなる。

過去形は、過去の習慣や状態も表す

過去形は、 一回だけの出来事だけでなく、 過去の習慣を表すこともある。

I played soccer every day when I was a child.
私は子どものころ、毎日サッカーをしていました。

この文は、 「ある一日にサッカーをした」 という一回の出来事ではない。 子どものころの期間に、 くり返しサッカーをしていたことを表している。

My grandfather often told me old stories.
祖父はよく私に昔話をしてくれました。

We usually walked to school then.
私たちはそのころ、たいてい歩いて学校へ行っていました。

often / usually / every day のような語句があると、 過去の習慣として読みやすい。

高校英文法では、 過去の習慣を表す表現として、 used to も重要になる。

I used to play soccer after school.
私は以前、放課後にサッカーをしていました。

used to は、 「昔はそうしていた」 という意味を表しやすい表現である。 多くの場合、 今は同じではない、 という含みを持つ。

I played soccer after school.
→ 放課後にサッカーをした/していた

I used to play soccer after school.
→ 以前は放課後にサッカーをしていた

ここで大切なのは、 過去形が 過去の一回の出来事 にも、 過去のくり返しや状態 にも使われるということである。

文の意味を判断するときは、 動詞の形だけでなく、 いつの話なのか一回の出来事なのかくり返しの習慣なのか を見る必要がある。

これは、高校英文法で 時制 を詳しく学ぶときの基本姿勢になる。 時制は、形だけでなく、 話し手がその出来事をどのような時間の中で見ているかを表すからである。

過去形は、今の現実から離れた感じも表す

ここからが、高校英文法への大きな橋渡しである。 過去形は、実際の過去だけでなく、 今の現実から離れた感じ を表すことがある。

たとえば、中3で学んだ仮定法を思い出そう。

If I were you, I would study harder.
もし私があなたなら、もっと一生懸命勉強するでしょう。

この文は、 「私は過去にあなたでした」 という意味ではない。 現実には私はあなたではない。 その現実とは違う状況を、 仮に考えている。

ここで were が使われるのは、 過去の時間を表すためというより、 今の現実から離れていること を示すためである。

I am you.
→ 現実の文としては成り立ちにくい

If I were you, ...
→ 現実とは違うことを仮に考えている

同じように、 I wish の文でも過去形が使われる。

I wish I could speak English well.
英語を上手に話せたらいいのに。

この could も、 「過去にできた」 という意味ではない。 今はできない、 けれどそうだったらいいのに、 という現実との距離を表している。

さらに、丁寧な依頼でも、 過去形が距離感を作ることがある。

Can you open the window?
窓を開けてくれますか。

Could you open the window?
窓を開けていただけますか。

couldcan の過去形だが、 この文では過去の能力を表しているわけではない。 相手との距離を少し取り、 直接的すぎない依頼にしている。

このように、過去形には、 時間的な過去 だけでなく、 心理的な距離 を表す働きがある。

過去形
→ 過去の時間を表す
→ 今の現実から離れた仮定を表す
→ 相手との距離を取って丁寧さを出す

高校英文法では、 仮定法や助動詞の過去形を学ぶときに、 この考え方がとても重要になる。 過去形を「昔のこと」とだけ覚えていると、 If I were youCould you ...? が理解しにくくなるのである。

過去形・現在完了・過去完了をつなげて考える

過去形を理解するときは、 現在完了との違いも大切である。

I visited Kyoto last year.
私は去年京都を訪れました。

I have visited Kyoto three times.
私は京都を三回訪れたことがあります。

I visited Kyoto last year. は、 去年という過去の時点を見ている。 一方、 I have visited Kyoto three times. は、 今までの経験として京都を訪れたことを見ている。

過去形
→ 過去のある時点を見る

現在完了
→ 過去から今までを一つのつながりとして見る

過去形は、 過去の出来事を今から切り離して見る。 現在完了は、 過去の出来事や状態が今とどうつながっているかを見る。

そして、高校英文法では、 ここに 過去完了 が加わる。

When I arrived at the station, the train had already left.
私が駅に着いたとき、電車はすでに出発していました。

この文では、 arrived という過去の時点よりも前に、 had already left という出来事が起きていたことを表している。

つまり、過去完了は、 過去のある時点よりさらに前 を表すために使われる。

現在完了
→ 今を基準にして、それ以前を見る

過去完了
→ 過去のある時点を基準にして、それ以前を見る

このように考えると、 過去形は、 高校英文法の時制全体を理解するための中心になる。

現在形
→ 現在の事実・習慣・一般的なこと

過去形
→ 過去の場面、または今から離れた距離感

現在完了
→ 過去から今へのつながり

過去完了
→ 過去の時点から、さらに前へのつながり

過去形は、 「昔のことを言う形」 である。 しかし、それだけではない。 過去形は、 今から離れた場面を見る形であり、 ときには現実から離れた仮定や、 相手との距離感を表す形にもなる。

ここまで見えてくると、 高校英文法で出てくる過去完了、助動詞の過去形、仮定法も、 ばらばらの暗記事項ではなく、 過去形が持つ距離感の広がり としてつながって見えてくるのである。

学習塾Study+から

学習塾Study+では、過去形を「過去のこと」として覚えるだけでなく、 今から離れた場面や現実とは違う仮定を表す形として整理します。 この見方があると、現在完了・過去完了・仮定法へ進んだときに、時制をばらばらに暗記しなくて済みます。

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