中学英文法では、 to + 動詞の原形 を使って、 「〜すること」 「〜するために」 「〜するための」 という形を学んだ。
I want to read this book.
私はこの本を読みたい。
I went to the library to study English.
私は英語を勉強するために図書館へ行きました。
I have a lot of homework to do.
私にはするべき宿題がたくさんあります。
ここまでは、 to read / to study / to do のように、 不定詞のまとまりが文の中でどのような働きをしているかを見ることが中心だった。
しかし高校英文法に入ると、 もう一つ大事な見方が出てくる。 それは、 その不定詞の動作を、誰がするのか という見方である。
It is easy for me to read this book.
私にとって、この本を読むのは簡単です。
It is kind of you to help me.
私を助けてくれるなんて、あなたは親切です。
どちらの文にも、 to read や to help という不定詞がある。 そして、 その動作をする人を、 for me や of you で補っている。
このように、 不定詞の動作をする人やものを、 文法では 不定詞の意味上の主語 と呼ぶ。
今回は、 不定詞の意味上の主語を、 用語の暗記ではなく、 誰がその動作をするのかを補う仕組み として整理していこう。
不定詞にも「誰がするのか」がある
まず、 次の文を見てみよう。
I want to read this book.
私はこの本を読みたい。
この文では、 to read this book の動作をするのは、 文の主語である I である。
I want to read this book.
→ 読むのは I
では、 次の文ではどうだろうか。
I want you to read this book.
私はあなたにこの本を読んでほしい。
この文では、 to read this book の動作をするのは、 I ではなく you である。
I want you to read this book.
→ 読むのは you
このように、 不定詞を読むときは、 to + 動詞の原形 という形だけを見るのではなく、 その動作をする人も確認する必要がある。
さらに、 次の文では、 不定詞の動作をする人が for me で示されている。
It is easy for me to read this book.
私にとって、この本を読むのは簡単です。
ここでの to read this book は、 「この本を読むこと」 というまとまりである。 そして、 読む人は me である。
It is easy for me to read this book.
→ read this book するのは me
文の本当の主語は形式的には It だが、 不定詞の動作に注目すると、 me が「読む人」になっている。
このように、 文全体の主語とは別に、 不定詞の中の動作をする人を考える。 これが、 意味上の主語 という見方である。
for + 人 + to 〜 は、その人が〜することを表す
不定詞の意味上の主語を表すとき、 もっとも基本になるのが、 for + 人 + to 〜 である。
It is difficult for me to answer this question.
私にとって、この質問に答えるのは難しい。
この文では、 to answer this question の動作をする人が me である。
for me to answer this question
→ 私がこの質問に答えること
日本語にすると、 for me は「私にとって」と訳されることが多い。 ただし、 ここで大事なのは、 訳語を丸暗記することではない。
大事なのは、 to answer の動作をする人が me である、 という関係である。
It is important for us to protect the environment.
私たちが環境を守ることは大切です。
この文では、 to protect the environment の動作をするのは us である。
for us to protect the environment
→ 私たちが環境を守ること
また、 too ... to や enough to の文でも、 不定詞の動作をする人を for で補うことがある。
This bag is too heavy for me to carry.
このかばんは、私が運ぶには重すぎます。
This box is light enough for Ken to carry.
この箱は、健が運べるくらい十分に軽いです。
ここでも、 carry する人が、 それぞれ me や Ken で示されている。
つまり、 for + 人 + to 〜 は、 「その人にとって」 と訳すだけでなく、 その人が〜すること というまとまりとして読むことが大切である。
It is easy for me to read this book.
→ 私がこの本を読むことは簡単だ
It is important for us to study English.
→ 私たちが英語を勉強することは大切だ
高校英文法では、 このように 形だけでなく、まとまりの中で誰が何をするのか を見ることが増えていく。
of + 人 + to 〜 は、その人への評価を表す
ここで、 もう一つ大事な形を確認しよう。
It is kind of you to help me.
私を助けてくれるなんて、あなたは親切です。
この文でも、 to help me の動作をするのは you である。
of you to help me
→ あなたが私を助けること
しかし、 ここでは for you ではなく、 of you が使われている。
なぜなら、 kind という形容詞が、 行動の難しさや大切さではなく、 その人の性質や態度 を評価しているからである。
It is kind of you to help me.
→ You are kind to help me.
→ 助けてくれるあなたは親切だ
このように、 of + 人 + to 〜 は、 その行動を通して、 人を評価する形でよく使われる。
It was careless of him to lose his key.
鍵をなくすなんて、彼は不注意でした。
It was wise of her to say nothing.
何も言わなかったのは、彼女は賢明でした。
It was nice of you to invite me.
私を招待してくれるなんて、あなたは親切でした。
これらの文では、 careless / wise / nice が、 行動そのものだけでなく、 その行動をした人のあり方を評価している。
一方、 次の文では、 easy は人の性格を評価しているわけではない。
It is easy for me to read this book.
→ 私がこの本を読むことは簡単だ
→ 私自身が「簡単な人」なのではない
だから、 easy of me とはしない。
It is kind of you to help me.
→ あなたは親切だと言える
It is easy for me to read this book.
→ 私が簡単な人だ、とは言えない
目安としては、 その形容詞が 人そのものを評価している なら of が使われやすい。 行動の難しさ・大切さ・必要性などを述べているなら、 for が使われやすい。
高校英文法では「誰が何をするか」を細かく見る
不定詞の意味上の主語は、 用語だけを見ると難しく感じるかもしれない。 しかし、 見ていること自体はとても自然である。
英文の中に不定詞が出てきたら、 次のように考えればよい。
1. to の後ろの動詞を確認する
2. その動作を誰がするのかを考える
3. 必要なら for + 人、または of + 人 で補われる
たとえば、 次の文では、 不定詞の動作をする人が文の主語と同じである。
I want to study abroad.
私は留学したい。
→ study abroad するのは I
次の文では、 不定詞の動作をする人が、 you で示されている。
I want you to study abroad.
私はあなたに留学してほしい。
→ study abroad するのは you
さらに、 次の文では、 for children が不定詞の意味上の主語になっている。
It is dangerous for children to swim here.
子どもたちがここで泳ぐのは危険です。
→ swim here するのは children
そして、 次の文では、 of you が不定詞の動作をする人を表しながら、 その人への評価にもつながっている。
It was brave of you to tell the truth.
本当のことを言うなんて、あなたは勇敢でした。
→ tell the truth するのは you
→ you are brave と評価している
高校英文法では、 不定詞の否定形、完了形、受動態など、 中学よりも細かい形を学んでいく。 そのときにも、 誰が何をするのか という見方は土台になる。
不定詞は、 ただ to + 動詞の原形 と覚えるだけでは足りない。 その不定詞が文の中で何の働きをしているのか。 そして、 その動作を誰がするのか。 ここまで見ることで、 英文の構造がかなりはっきり見えてくる。
不定詞の意味上の主語とは、 難しい専門用語というより、 to の後ろの動作をする人を確認するための見方 なのである。