塾長ノート

I am sorry to have kept you waiting. はなぜ to have kept になるのか

述語動詞より前のことを、不定詞の完了形で表す

中学英語では、 不定詞をまず to + 動詞の原形 として学ぶ。

I want to play tennis.
私はテニスをしたいです。

I went to the library to study English.
私は英語を勉強するために図書館へ行きました。

ここまでは、 不定詞の後ろには動詞の原形を置く、 と考えればよかった。

しかし高校英文法に入ると、 次のような形が出てくる。

I am sorry to have kept you waiting.
あなたを待たせてしまって申し訳ありません。

to keep ではなく、 to have kept になっている。 これは、 不定詞の完了形 と呼ばれる形である。

名前は少し難しく見えるが、 考え方はそこまで複雑ではない。

不定詞の完了形は、 述語動詞が表す時点より前のこと を表すための形である。

今回は、 to have + 過去分詞 を、 「現在完了の仲間」として丸暗記するのではなく、 どの時点から見て前のことなのか という視点から整理していこう。

不定詞にも、時間のずれを表す形がある

まず、 普通の不定詞を確認しよう。

I am glad to see you.
あなたに会えてうれしいです。

この文では、 am glad という今の気持ちと、 to see you という内容が強くつながっている。

中学英語では、 このように 感情の原因 を表す不定詞として学んだ。

I am happy to hear the news.
その知らせを聞いてうれしいです。

I was surprised to see him there.
そこで彼を見て驚きました。

では、 次の文はどうだろうか。

I am sorry to have kept you waiting.
あなたを待たせてしまって申し訳ありません。

この文では、 話し手が今 am sorry という気持ちを持っている。 その理由は、 それより前に 相手を待たせてしまったことにある。

つまり、 待たせた という出来事は、 申し訳なく思っている今 より前に起きている。

I am sorry to keep you waiting.
→ 待たせていることについて申し訳ない

I am sorry to have kept you waiting.
→ 待たせてしまったことについて申し訳ない

日本語では、 どちらも 「待たせてすみません」 のように訳せることがある。 しかし英語では、 その動作がいつのことなのか を形で示すことがある。

普通の不定詞は、 述語動詞と同じ時点、 またはそれより後のことを表しやすい。 一方、 完了形の不定詞は、 述語動詞より前のことを表す。

この違いを押さえると、 to have kept という形が、 急に意味の分からない例外ではなくなる。

to have + 過去分詞は、述語動詞より前のことを表す

不定詞の完了形は、 次の形で作る。

to have + 過去分詞

たとえば、 keep の過去分詞は kept なので、 完了形の不定詞は to have kept になる。

to keep
→ 待たせる、保つ

to have kept
→ それ以前に待たせた、保っていた

ここで大切なのは、 to have + 過去分詞 が、 いつでも日本語の「現在完了」と同じ意味になるわけではない、 という点である。

現在完了は、 現在を基準にして、 過去から今へのつながりを表す。

I have finished my homework.
私は宿題を終えました。

一方、 不定詞の完了形は、 文の述語動詞が表す時点を基準にして、 それより前を表す。

I am sorry to have kept you waiting.
→ 今申し訳なく思っている。待たせたのはそれより前。

述語動詞が過去形なら、 その過去の時点より前を表すこともある。

I was sorry to have kept you waiting.
私は、あなたを待たせてしまったことを申し訳なく思いました。

この文では、 was sorry が過去の気持ちである。 そして、 to have kept you waiting は、 その過去の気持ちよりも前に起きたことを表す。

was sorry
→ 過去のある時点で申し訳なく思った

to have kept you waiting
→ その時点より前に待たせてしまっていた

つまり、 不定詞の完了形で見るべきなのは、 「現在完了かどうか」ではない。 文の中心になっている動詞より前かどうか である。

seem / appear / be said でも、前の出来事を表せる

不定詞の完了形は、 sorry の文だけで使うわけではない。

高校英文法では、 seem to have done のような形もよく出てくる。

He seems to have lost his wallet.
彼は財布をなくしたようです。

この文では、 seems が現在の判断を表している。 その判断の内容は、 彼がすでに財布をなくしたらしい、 ということである。

He seems to be tired.
彼は疲れているようです。

He seems to have been tired.
彼は疲れていたようです。

to be tired なら、 seems と同じ時点で疲れているように見える。 to have been tired なら、 その判断より前に疲れていたようだ、 という意味になる。

また、 be said to have done のような形もある。

He is said to have written many books.
彼は多くの本を書いたと言われています。

この文では、 is said が「言われている」という現在の表現である。 しかし、 本を書いたことは、 その現在の評判より前の出来事として捉えられている。

ここでも、 考え方は同じである。

to write
→ 書くこと、書く予定・同時的な内容

to have written
→ それ以前に書いたこと

高校英文法では、 こうした形が長い英文の中に出てくる。 そのときに、 to have + 過去分詞 を見たら、 まず 前のことを表している と考えるとよい。

ただし、 すべてを日本語で 「〜したことを持っている」 のように直訳しようとすると、 かえって分かりにくくなる。 形としては have + 過去分詞 を含むが、 読むときは 述語動詞より前 という時間関係を優先して考える。

不定詞の完了形は、英文の時間関係を見るための道具である

不定詞の完了形を学ぶとき、 つまずきやすいのは、 形だけを見てしまうことである。

to have kept
to have lost
to have written

これらを見ると、 「不定詞なのに have がある」 「過去分詞が出てきた」 と感じて、 急に難しく見える。

しかし、 見る順番を決めると整理しやすい。

1. 文の中心になる述語動詞を見る
2. 不定詞が何を表しているかを見る
3. その不定詞が述語動詞より前のことかどうかを見る

たとえば、 次の文では、 まず am sorry を見る。

I am sorry to have kept you waiting.

そのうえで、 to have kept you waiting が、 その気持ちより前に起きたことを表していると考える。

次の文では、 まず seems を見る。

He seems to have lost his wallet.

そのうえで、 財布をなくしたことが、 今そう見えるという判断より前に起きたと読む。

このように、 不定詞の完了形は、 英文の中で 時間の前後関係 を示すための形である。

中学英語では、 不定詞を to + 動詞の原形 として学んだ。 高校英文法では、 そこに 意味上の主語完了形 が加わる。

しかし、 どれもばらばらの暗記事項ではない。 不定詞が、 誰の動作なのかいつの動作なのか、 そして 文の中でどんな働きをしているのか を見るための整理である。

to have + 過去分詞 を見たら、 まずは 「述語動詞より前のことを表している」 と考える。 それだけで、 高校英文法の不定詞はかなり読みやすくなるのである。

学習塾Study+から

学習塾Study+では、不定詞を「to + 動詞の原形」として終わらせず、 その動作が誰のものなのか、いつのことなのかまで確認します。 to have kept のような形を時間関係から読めるようになると、高校英文法や英文解釈にも入りやすくなります。

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