動名詞は、 動詞の -ing形 を名詞のように使う形である。
I like playing tennis.
私はテニスをすることが好きです。
この文では、 playing tennis が、 「テニスをすること」 という名詞のまとまりとして使われている。
ここまでは中学英文法でも学ぶ内容である。 しかし高校英文法に入ると、 動名詞の前に、 その動作をする人を補う形が出てくる。
Do you mind my opening the window?
私が窓を開けてもかまいませんか。
ここで迷いやすいのは、 my opening という並びである。 日本語の感覚だけで見ると、 「私の開ける」 のように見えて、 少し不自然に感じるかもしれない。
しかしこの my は、 「窓を開ける」という動作を、 誰がするのか を示している。
my opening the window
→ 私が窓を開けること
つまり、 my はただの所有を表しているのではなく、 動名詞 opening の動作をする人を示している。
今回は、 動名詞の前に置かれる my / your / him / Ken などの語を、 動名詞の意味上の主語 という考え方から整理しよう。
動名詞にも「誰がするのか」がある
まず、 動名詞だけの文を確認しよう。
I like playing tennis.
私はテニスをすることが好きです。
この文では、 普通、 テニスをするのは I である。
I like playing tennis.
→ 私は、自分がテニスをすることが好きだ
では、 「私がテニスをすること」ではなく、 「弟がテニスをすること」が好きだと言いたい場合はどうするか。
I like my brother playing tennis.
私は弟がテニスをするのを見るのが好きです。
私は弟がテニスをすることが好きです。
この場合、 playing tennis という動作をしているのは、 I ではなく my brother である。
このように、 動名詞の動作をする人を、 動名詞の前に補うことがある。
my brother playing tennis
→ 弟がテニスをすること
my opening the window
→ 私が窓を開けること
ここでの my brother や my は、 動名詞の中での主語のような働きをしている。 これを 動名詞の意味上の主語 と呼ぶ。
「意味上の主語」という言い方は少しかたいが、 考え方は難しくない。
文全体の主語
→ 文全体で中心になる人やもの
動名詞の意味上の主語
→ 動名詞の動作をする人やもの
たとえば、 次の文では、 文全体の主語は I である。
I don't like him talking loudly.
私は彼が大声で話すのが好きではありません。
しかし、 talking loudly という動作をしているのは、 I ではなく him である。
つまり、 文全体の主語と、 動名詞の中の動作主が違うことがある。 その違いを見えるようにするために、 動名詞の前に人を置くのである。
所有格を使うと、動名詞とのまとまりがはっきりする
高校英文法では、 動名詞の意味上の主語を表すとき、 所有格 を使う形がよく説明される。
Do you mind my opening the window?
私が窓を開けてもかまいませんか。
この my は、 I の所有格である。
I → my
you → your
he → his
she → her
they → their
所有格を使うと、 後ろの動名詞とまとまりやすくなる。
my opening the window
→ 私が窓を開けること
your coming here
→ あなたがここへ来ること
his being late
→ 彼が遅れること
たとえば、 次の文を見てみよう。
I was surprised at his passing the exam.
私は彼が試験に合格したことに驚きました。
passing the exam は、 「試験に合格すること」という動名詞のまとまりである。 その合格をしたのは he なので、 所有格の his を前に置いて、 his passing the exam とする。
この形は、 少し硬めの英語や、 文法問題では特に大切である。
I object to his using this room.
私は彼がこの部屋を使うことに反対です。
object to の後ろには名詞が来る。 そのため、 his using this room 全体が名詞のまとまりとして、 前置詞 to の後ろに置かれている。
ここで大事なのは、 his だけを見るのではなく、 his using this room 全体を一つの名詞のまとまりとして見ることである。
目的格が使われることもある
一方で、 実際の英語では、 所有格ではなく、 目的格 が使われることも多い。
Do you mind me opening the window?
私が窓を開けてもかまいませんか。
この me opening the window も、 意味としては my opening the window とほぼ同じである。
my opening the window
→ 私が窓を開けること
me opening the window
→ 私が窓を開けること
文法的にきちんと整理すると、 動名詞の意味上の主語には所有格を使う、 と説明されることが多い。 ただし、 会話やくだけた表現では、 目的格もよく使われる。
I don't like him talking like that.
私は彼がそのように話すのが好きではありません。
この文では、 him が talking の動作主を表している。
では、 所有格と目的格のどちらを使えばよいのだろうか。
まず、 文法問題や整った書き言葉では、 所有格の形を押さえておくとよい。
Do you mind my opening the window?
I was surprised at his passing the exam.
ただし、 普段の英語表現では、 目的格の形も自然に使われる。
Do you mind me opening the window?
I don't like him talking loudly.
学習の入口では、 どちらか一方だけを絶対視するより、 動名詞の前に置かれた人が、その動作をする人を表している と理解することが重要である。
所有格か目的格かの違いは、 そのうえで、 文体や文法問題の要求に応じて整理すればよい。
Do you mind if ...? と言い換えると分かりやすい
Do you mind my opening the window? は、 最初は少し構造が見えにくい。 そのようなときは、 if を使った文と比べると分かりやすい。
Do you mind my opening the window?
私が窓を開けることを気にしますか。
Do you mind if I open the window?
もし私が窓を開けるなら、気にしますか。
どちらも、 自然な日本語では 「窓を開けてもいいですか」 に近い意味になる。
ただし、 文の作り方は違う。
my opening the window
→ 動名詞を使った名詞のまとまり
if I open the window
→ if で始まる節のまとまり
my opening the window は、 「私が窓を開けること」という名詞のまとまりで、 mind の目的語になっている。
一方、 if I open the window は、 「もし私が窓を開けるなら」という節である。
高校英文法では、 同じような意味を表す内容でも、 句で表すのか、節で表すのか が重要になる。 これは、 article328 で扱った句と節の見方にもつながる。
動名詞のまとまり
→ my opening the window
節のまとまり
→ if I open the window
また、 動名詞の意味上の主語は、 不定詞の意味上の主語とも比べられる。
It is easy for me to read this book.
→ to read の動作をする人は me
Do you mind my opening the window?
→ opening の動作をする人は my が示す I
不定詞では for + 人 + to のような形で、 動作をする人を補った。 動名詞では、 動名詞の前に所有格や目的格を置いて、 動作をする人を補う。
つまり、 高校英文法で大切なのは、 形を別々に暗記することだけではない。 不定詞にも動名詞にも、 その動作を誰がするのか という見方がある。
Do you mind my opening the window? の my opening は、 「私の開ける」と直訳して悩む部分ではない。 私が窓を開けること という一つの名詞のまとまりとして見る。
動名詞の前に人を表す語が置かれていたら、 まず、 この -ing の動作をするのは誰か と考えてみよう。 その視点が持てると、 動名詞の意味上の主語は、 単なる細かい文法用語ではなく、 英文の構造を読むための手がかりになる。