高校英文法に入ると、 時制の一致 という言葉が出てくる。
He said that he was busy.
彼は忙しいと言いました。
日本語だけを見ると、 「忙しい」と言っているのだから、 is busy でもよさそうに見える。
He says that he is busy.
彼は忙しいと言っています。
He said that he was busy.
彼は忙しいと言いました。
ここで変わっているのは、 忙しいという内容そのもの ではない。 その内容を、 いつの時点から見ているか である。
says なら、今言っている。 だから後ろの内容も、今のこととして is busy と言える。
一方、 said なら、言ったのは過去である。 その過去の時点で「忙しい」と言っていた内容を、 後ろの that節 でも過去形にして表すことがある。
これが、時制の一致の基本である。 今回は、時制の一致を ただ過去形に直すルール としてではなく、 主節と従属節の基準時をそろえる見方 として整理しよう。
時制の一致は、基準になる時点をそろえること
まず、次の二つの文を比べよう。
I think that he is honest.
私は、彼は正直だと思います。
I thought that he was honest.
私は、彼は正直だと思いました。
一つ目の文では、 think が現在形である。 今そう思っているので、 後ろの内容も現在形の is honest で表している。
二つ目の文では、 thought が過去形である。 過去のある時点でそう思った、という文である。 そのため、後ろの内容も was honest と過去形になっている。
I think that he is honest.
→ 今の視点で「彼は正直だ」と思っている
I thought that he was honest.
→ 過去の視点で「彼は正直だ」と思った
ここで大切なのは、 that節だけを見て時制を決めているわけではない ということである。
文全体では、 I thought という過去の視点が先に置かれている。 その過去の視点に合わせて、 that節の中も was になっている。
このように、 主節の動詞が過去形になると、 従属節の中の時制も、 その過去の視点に合わせて一つ前にずれることがある。
is → was
are → were
can → could
will → would
ただし、時制の一致は、 すべてを機械的に過去形にする作業ではない。 まずは、 主節がどの時点から話しているのか を見ることが大切である。
主節が過去なら、that節も過去にそろいやすい
時制の一致がよく出るのは、 think / know / say / tell などの後ろに that節 が続く文である。
She says that she likes music.
彼女は音楽が好きだと言っています。
She said that she liked music.
彼女は音楽が好きだと言いました。
says なら、今言っている。 そのため、後ろの likes も現在形でよい。
said なら、言ったのは過去である。 その過去の発言内容として liked music と表す。
助動詞が入る場合も同じである。
He says that he can swim.
彼は泳げると言っています。
He said that he could swim.
彼は泳げると言いました。
can は、主節が過去になると could になることが多い。 これは、能力そのものが消えたという意味ではなく、 過去の発言内容として表しているからである。
He says that he will help me.
彼は私を手伝うと言っています。
He said that he would help me.
彼は私を手伝うと言いました。
will も、過去の発言内容として表すときは would になる。
このような変化は、 単語だけを日本語に対応させて覚えると混乱しやすい。
said that he was busy
→ 過去の時点で「忙しい」と言った
said that he could swim
→ 過去の時点で「泳げる」と言った
said that he would help me
→ 過去の時点で「手伝うつもりだ」と言った
時制の一致では、 内容を過去にする というより、 過去の視点からその内容を報告する と考えると分かりやすい。
いつでも過去形にするわけではない
時制の一致を学ぶと、 「主節が過去なら、後ろは必ず過去形にする」 と覚えたくなる。
しかし、実際には、 いつでも機械的に過去形にするわけではない。
たとえば、一般的な事実や真理を述べるときは、 現在形のままにすることがある。
Our teacher said that the earth goes around the sun.
先生は、地球は太陽の周りを回っていると言いました。
地球が太陽の周りを回ることは、 過去のその時点だけの事実ではない。 今も成り立つ一般的な事実である。 そのため、 goes のまま表すことができる。
また、話している時点でも内容が現在のこととして強く意識される場合、 現在形を残すこともある。
She said that she is still busy.
彼女は、今もまだ忙しいと言いました。
もちろん、学校文法の基本練習では、 まず She said that she was busy. のように、時制をそろえる形を練習することが多い。
ただ、高校英文法としては、 時制の一致を 自動的な置換ルール としてだけ覚えると、あとで読みづらくなる。
主節が過去だから、必ず全部過去形
ではなく、
どの時点から内容を見ているのか
を考える。
この見方は、 そのまま話法の転換にもつながる。 直接話した言葉を、あとから報告する形に変えるとき、 時制・代名詞・時間表現を、 報告する側の視点に合わせて整える必要があるからである。
話法の転換では、時制だけでなく視点も変わる
時制の一致は、 話法の転換 と強く関係している。
話法とは、 人が言ったことをどのように伝えるかということである。 まず、発言をそのまま引用する形を見てみよう。
He said, "I am busy."
彼は「私は忙しい」と言いました。
この形では、 発言そのものを引用している。 そのため、引用符の中では、 発言した人の言葉がそのまま残っている。
これを、that節を使って報告する形にすると、 次のようになる。
He said that he was busy.
彼は忙しいと言いました。
ここでは、 I が he に変わっている。 さらに、 am が was に変わっている。
I → he
am → was
これは、発言者本人の視点ではなく、 その発言をあとから伝える人の視点で文を作り直しているからである。
未来表現でも同じことが起こる。
She said, "I will call you."
彼女は「あなたに電話します」と言いました。
She said that she would call me.
彼女は私に電話すると言いました。
ここでは、 I が she に、 you が me に、 will が would に変わっている。
つまり、話法の転換では、 単に時制だけを変えるのではない。 誰の視点で、いつのこととして、誰に向けた内容を伝えるのか を整えているのである。
時制の一致を学ぶ意味は、 「現在形を過去形に直す問題」を解くためだけではない。 英文の中で、 中心になる動詞がどの時点にあり、後ろの節がその時点とどう関係しているか を読むためにある。
高校英文法では、 that節、間接疑問文、話法、仮定法、完了形など、 時制の見方が何度も必要になる。 時制の一致は、そのための土台になる考え方なのである。