英文の語順は、基本的にはかなり安定している。
I have never seen such a beautiful sunset.
私はそのような美しい夕日を一度も見たことがありません。
ふつうの語順で言えば、 I have never seen ... となる。 主語 I があり、 助動詞 have が続き、 そのあとに never が置かれている。
ところが、高校英文法では次のような文に出会う。
Never have I seen such a beautiful sunset.
私はそのような美しい夕日を一度も見たことがありません。
意味は大きく変わらない。 しかし語順は、 Never + have + I + seen になっている。
これは、 倒置 と呼ばれる形である。 倒置とは、ふつうの語順を入れ替えることで、 ある語句を前に出したり、文のリズムや焦点を変えたりする表現である。
中学英語では、疑問文を作るときに語順が変わることを学んだ。
You are busy.
Are you busy?
He can swim.
Can he swim?
高校英文法で扱う倒置は、 それより少し広い。 疑問文ではなくても、 何かを前に出すために語順が変わる ことがある。
今回は、倒置を「特殊で暗記しにくい形」としてではなく、 何を前に出し、何を目立たせているのか という視点から整理していこう。
倒置は、語順を入れ替えて焦点を作る形である
まず、倒置の基本的な考え方を押さえよう。
I have never seen such a beautiful sunset.
私はそのような美しい夕日を一度も見たことがありません。
この文でも、 never は否定の意味を表している。 ただし、文の中ほどに置かれているため、 語順としてはふつうである。
これに対して、 never を文頭に出すと、 「一度もない」という否定の意味が強く前面に出る。
Never have I seen such a beautiful sunset.
このとき、英語では単に Never I have seen ... とは言わない。 否定語が文頭に出ると、 その後ろは have I のように、 助動詞が主語の前に出る形になる。
I have never seen ...
→ Never have I seen ...
これは疑問文と似た語順である。 ただし、意味は疑問ではない。 あくまで、否定語を前に出したことに伴って語順が変わっている。
つまり、倒置を見るときは、 まず次の二つを確認するとよい。
1. 何が文頭に出ているか
2. そのために、どの語順が変わっているか
倒置は、 何もないところから突然起こるわけではない。 多くの場合、 前に出された語句 がある。 その語句を手がかりにすると、文の構造を読みやすくなる。
否定語が文頭に出ると、助動詞が主語の前に出る
高校英文法で特に重要なのは、 否定語が文頭に出る倒置 である。
Never have I seen such a beautiful sunset.
この文では、 never が文頭に出ている。 そのため、後ろは have I seen という語順になる。
同じように、 little や hardly など、否定に近い意味を持つ語句が前に出ても倒置が起こることがある。
Little did I know the truth.
私はその真実をほとんど知らなかった。
Hardly had I arrived when it began to rain.
私が到着するやいなや、雨が降り始めました。
ここで大切なのは、 did I know や had I arrived を見て、すぐに疑問文だと決めつけないことである。
文頭に Little や Hardly があるなら、 それは疑問文ではなく、 否定的な語句を前に出した倒置である可能性が高い。
Never have I seen ...
Little did I know ...
Hardly had I arrived ...
この形では、 助動詞がある場合はその助動詞が主語の前に出る。 助動詞がない一般動詞の文では、 疑問文と同じように do / does / did が使われる。
I knew little about the problem.
→ Little did I know about the problem.
倒置を読むときは、 まずふつうの語順に戻してみると理解しやすい。
Never have I seen such a beautiful sunset.
→ I have never seen such a beautiful sunset.
もとの語順に戻せば、 文の基本構造はそれほど難しくない。 倒置は、文法を別物にしているのではなく、 語順を変えて見せ方を変えている のである。
場所や方向を前に出す倒置もある
倒置は、否定語だけで起こるわけではない。 場所や方向を表す語句が文頭に出る場合にも、語順が変わることがある。
Here comes the bus.
バスが来ました。
There goes the bell.
ベルが鳴りました。
これらは、 Here / There を前に出して、 目の前の動きや場面を生き生きと表している。
ただし、すべての文で同じように倒置するわけではない。 代名詞が主語になる場合は、ふつう語順を入れ替えない。
Here comes the bus.
Here it comes.
the bus のような名詞が主語なら comes the bus となるが、 it のような代名詞では it comes の語順になる。
また、場所を表す語句が前に出ることで、 その場面を先に見せるような倒置もある。
On the wall was a beautiful picture.
壁には美しい絵がありました。
ふつうに言えば、 次のようにも表せる。
A beautiful picture was on the wall.
しかし、 On the wall を前に出すと、 まず「壁には」と場面を示し、 そのあとで a beautiful picture を登場させる形になる。
このような倒置は、 英文解釈で出会うと少し驚くかもしれない。 しかし、考え方は同じである。
On the wall was a beautiful picture.
→ A beautiful picture was on the wall.
前に出ている語句をいったん後ろに戻すと、 基本の文構造が見えやすくなる。
倒置は、ふつうの語順に戻して読むと理解しやすい
倒置は、見た目が特殊なので、 最初は難しく感じやすい。 しかし、読み方の手順はかなり単純である。
1. 文頭に出ている語句を確認する
2. 主語と動詞の語順が入れ替わっているかを見る
3. 必要なら、ふつうの語順に戻す
4. なぜその語句が前に出ているのか考える
たとえば、 次の文を見てみよう。
Never have I heard such a strange story.
まず、文頭に Never が出ている。 その後ろが have I heard になっているので、否定語による倒置だと分かる。
ふつうの語順に戻すと、 次のようになる。
I have never heard such a strange story.
こうすれば、 「私はそのような奇妙な話を一度も聞いたことがない」 という基本の意味が見える。
ただし、倒置された文では、 never が文頭に出ているぶん、 「一度もない」という意味が強く響く。
I have never heard such a strange story.
→ ふつうに否定している
Never have I heard such a strange story.
→ 「一度もない」を前面に出している
倒置は、単なる語順の変化ではない。 英語が、 どの情報を先に見せるか を調整するための形である。
高校英文法では、倒置を「例外的な語順」として丸暗記するのではなく、 前に出ている語句を手がかりに、基本語順へ戻して読む ことを意識したい。
Never have I seen such a beautiful sunset. は、ふつうの I have never seen such a beautiful sunset. を土台にしながら、 Never を前に出して否定の焦点を強めた文なのである。