英文を読んでいると、 文の形がいつも完全にそろっているわけではない。
If possible, I will call you today.
できれば、今日あなたに電話します。
この If possible は、 直訳しようとすると少し不思議に見える。 if の後ろには、ふつう 主語 + 動詞 を含む節が続くはずである。
If it is possible, I will call you today.
もしそれが可能なら、今日あなたに電話します。
この形を短くすると、 If possible になる。 つまり、 it is のような部分が、文脈から分かるため省かれているのである。
高校英文法では、このように、 文の一部が省かれることを 省略 として扱う。 また、文の途中に補足的な語句が差し込まれることを 挿入 として扱う。
どちらも、英文を読むときにかなり大切である。 省略に気づけないと、必要な主語や動詞を見失う。 挿入に気づけないと、文の中心から外れた補足情報に引っかかってしまう。
今回は、省略と挿入を、 難しい例外としてではなく、 英文を短くしたり、途中で補足を加えたりする仕組み として整理しよう。
省略は、文脈から分かる部分を言わない形である
まず、省略から見ていこう。
If possible, I will call you today.
この文は、もとの形を補うと、 次のように考えられる。
If it is possible, I will call you today.
it is は、前後の文脈から分かりやすい。 そのため、英語では短く If possible と言うことがある。
同じような形に、次の表現がある。
If necessary, please call me.
必要なら、私に電話してください。
When young, he lived in Kyoto.
若いころ、彼は京都に住んでいました。
これらも、もとの形を考えると分かりやすい。
If it is necessary, please call me.
When he was young, he lived in Kyoto.
省略は、何でも自由に消してよいという意味ではない。 消しても文脈から復元しやすい部分が、短くされているのである。
特に高校英文法では、 接続詞 + 形容詞 や 接続詞 + 分詞 のような形に出会うことがある。
Though tired, she kept studying.
疲れていたが、彼女は勉強を続けました。
これは、 Though she was tired のような形を短くしたものとして考えることができる。
省略を読むときは、 「何が足りないのか」と慌てるのではなく、 どんな語があれば普通の節として読めるか を考えるとよい。
繰り返しを避けるために、同じ語句が省かれることもある
省略は、接続詞の後ろだけで起こるわけではない。 同じ語句の繰り返しを避けるために、 一部が省かれることもある。
I like English, and my brother does, too.
私は英語が好きで、兄もそうです。
この文の does は、 likes English の内容を受けている。
I like English, and my brother likes English, too.
と全部くり返すこともできるが、 同じ内容なので、英語では短くすることが多い。
比較の文でも、同じような省略がよく起こる。
Ken is taller than Tom.
健はトムより背が高いです。
この文では、 Tom is tall のような内容が背景にある。 しかし、全部言うとくどくなるため、 than Tom と短くなっている。
Ken is taller than Tom is.
健はトムがそうであるよりも背が高いです。
このように、比較表現では、 文の後半に出るはずの動詞や補語が省略されることがある。
会話表現でも、省略はよく使われる。
A: Are you hungry?
B: Yes, I am.
ここで Yes, I am hungry. と全部言わなくても、 hungry は前の質問から分かる。 だから Yes, I am. で十分なのである。
省略は、英文を不完全にしているのではない。 むしろ、すでに分かっている情報をくり返さず、 文を自然に短くする働き をしている。
挿入は、文の途中に補足情報を差し込む形である
次に、挿入を見ていこう。
This book, I think, is very useful.
この本は、私は思うのですが、とても役に立ちます。
この文では、 I think が文の途中に差し込まれている。 しかし、文の中心だけを取り出すと、 次のようになる。
This book is very useful.
つまり、 I think は、文の骨組みそのものではなく、 話し手の見方を途中で補足しているのである。
同じように、次のような表現も挿入として読むことができる。
His plan, in my opinion, is reasonable.
彼の計画は、私の意見では、妥当です。
My father, however, did not agree with me.
しかし、父は私に賛成しませんでした。
挿入部分は、文の意味を補足するが、 文型の中心には入りにくい。 そのため、英文解釈では、 いったん挿入部分を外して、 文の骨組みを見ることが大切である。
This book, I think, is very useful.
→ This book is very useful.
His plan, in my opinion, is reasonable.
→ His plan is reasonable.
文の途中にコンマで挟まれた語句があるときは、 それが挿入かどうかを考えるとよい。 挿入なら、まず外して文の中心を確認し、 そのあとで補足情報として戻して読めばよい。
省略と挿入は、英文の中心を見失わないための視点である
省略と挿入は、反対のように見える。
省略
→ 文脈から分かる部分を言わない
挿入
→ 文の途中に補足情報を差し込む
しかし、英文を読むうえでは、どちらも同じ目的につながっている。 それは、 文の中心を見失わないこと である。
省略がある文では、 足りないように見える部分を、文脈から補って読む。
If possible, I will call you today.
→ If it is possible, I will call you today.
挿入がある文では、 途中に差し込まれた部分をいったん外して、文の骨組みを見る。
This book, I think, is very useful.
→ This book is very useful.
高校英文法では、 省略や挿入を細かい名称として覚えるよりも、 何が省かれているのか、何が差し込まれているのか を見抜けることが大切である。
長い英文では、 すべての語が同じ重さで並んでいるわけではない。 文の中心になる部分があり、 そこに説明や条件や補足が加わっている。
省略は、分かっている部分を短くする。 挿入は、途中で情報を補う。 そのどちらも、 英文の骨組みを意識して読むための重要な視点なのである。