ポケモンには、 数学の題材としてかなりおもしろい技があります。
今回取り上げるのは、 イッカネズミの専用技として知られる ねずみざん です。
ねずみざんは、 ノーマルタイプの物理技で、 威力は20。
ただし、普通の威力20の技ではありません。
最大で10回まで連続で攻撃できます。
つまり、10回すべて当たれば、 単純に考えて 20×10=200 の威力になります。
こう聞くと、 「威力200のすごい技」 という印象を持つかもしれません。
しかし、ここで大事なのが 命中率 です。
ねずみざんは命中90の技です。
そして、1回だけ命中判定をしてから10回攻撃するのではなく、 1回ごとに命中判定が行われ、外れた時点で攻撃が終わります。
つまり、ねずみざんは 「10回攻撃できる技」 というより、 外れるまで最大10回続く技 と考えたほうが正確です。
では、この技は平均すると何回くらい当たるのでしょうか。
また、期待値で見ると、 ねずみざんはどれくらいの威力の技と考えられるのでしょうか。
今回は、 ねずみざんを題材にして、 確率 と 期待値 の考え方を整理してみます。
ねずみざんは「最大10回」だが、必ず10回当たるわけではない
まず、ねずみざんの基本を整理します。
- 威力:20
- 命中:90
- 最大10回攻撃
- 1回ごとに命中判定
- 外れた時点で攻撃終了
ここで注意したいのは、 最大10回 という言葉です。
最大10回ということは、 うまくいけば10回当たります。
しかし、 必ず10回当たるわけではありません。
1回目で外れれば、 ダメージは0回分です。
1回目だけ当たって2回目で外れれば、 1回分のダメージで終わります。
5回当たって6回目で外れれば、 5回分のダメージで終わります。
そして、 10回すべて当たれば、 そこで最大回数に到達して終了します。
ねずみざんは「10回攻撃する技」ではなく、 「外れるまで最大10回続く技」と見ると、確率を考えやすくなる。
10回すべて当たる確率
まずは、 ねずみざんが10回すべて当たる確率を考えます。
命中率90%を小数で表すと、 0.9 です。
1回当たる確率は、 0.9。
2回連続で当たる確率は、 0.9を2回かけるので、
0.9 × 0.9 = 0.9² = 0.81
つまり、 81%です。
3回連続で当たる確率は、
0.9³ = 0.729
つまり、 72.9%です。
同じように考えると、 10回すべて当たる確率は、
0.9¹⁰
となります。
実際に計算すると、
0.9¹⁰ = 0.3486784401
です。
つまり、 ねずみざんが10回すべて当たる確率は、 約34.9% です。
だいたい 3回に1回くらい は10回すべて当たる、 と考えることができます。
逆に言えば、 約65.1%の確率で、 どこか途中で外れるということです。
「命中90ならほとんど当たりそう」 と思うかもしれません。
しかし、 それを10回連続で成功させるとなると、 話は変わります。
命中90%でも、10回連続で当てる確率は約34.9%。 1回ごとの成功率が高くても、連続成功になると確率は下がる。
ヒット数ごとの確率を表にする
次に、 ねずみざんが何回当たるかを、 ヒット数ごとに見てみます。
0回で終わるのは、 1回目で外れる場合です。
0回:0.1 = 10%
1回で終わるのは、 1回目は当たり、 2回目で外れる場合です。
1回:0.9 × 0.1 = 0.09 = 9%
2回で終わるのは、 1回目と2回目は当たり、 3回目で外れる場合です。
2回:0.9² × 0.1 = 0.081 = 8.1%
このように、 9回までは 「そこまで当たって、次で外れる」 という形になります。
ただし、10回だけは少し違います。
10回の場合は、 10回すべて当たればそこで終了です。
11回目で外れる必要はありません。
そのため、 10回ヒットの確率は、
10回:0.9¹⁰ = 約34.9%
になります。
表にすると、次のようになります。
| ヒット数 | 確率 | 考え方 |
|---|---|---|
| 0回 | 10.0% | 1回目で外れる |
| 1回 | 9.0% | 1回当たり、2回目で外れる |
| 2回 | 8.1% | 2回当たり、3回目で外れる |
| 3回 | 7.29% | 3回当たり、4回目で外れる |
| 4回 | 6.561% | 4回当たり、5回目で外れる |
| 5回 | 5.9049% | 5回当たり、6回目で外れる |
| 6回 | 5.31441% | 6回当たり、7回目で外れる |
| 7回 | 4.782969% | 7回当たり、8回目で外れる |
| 8回 | 4.3046721% | 8回当たり、9回目で外れる |
| 9回 | 3.87420489% | 9回当たり、10回目で外れる |
| 10回 | 34.86784401% | 10回すべて当たる |
この表を見ると、 少し不思議に感じるかもしれません。
0回、1回、2回……と確率が下がっていくのに、 10回だけ急に確率が大きくなっています。
これは、 10回だけ 最後に外れる必要がない からです。
9回で終わるには、 9回当てたあとに10回目を外す必要があります。
しかし、10回で終わるには、 10回すべて当てればよいだけです。
そのため、 10回ヒットの確率が大きくなります。
期待値とは何か
ここから、 期待値を考えます。
期待値とは、 簡単に言えば 平均するとどれくらいになるか を表す値です。
たとえば、 1回ごとに結果が変わるものでも、 何度もくり返せば、 だいたいの平均が見えてきます。
サイコロなら、 1、2、3、4、5、6のどれが出るかは毎回わかりません。
しかし、長い目で見た平均は、
(1+2+3+4+5+6) ÷ 6 = 3.5
になります。
この3.5が、 サイコロの出目の期待値です。
もちろん、 サイコロを1回振って3.5が出るわけではありません。
期待値は、 実際にその値がそのまま出るという意味ではなく、 平均としてどれくらいか を表す考え方です。
ねずみざんも同じです。
実際には、 0回で終わることもあれば、 10回すべて当たることもあります。
では、平均すると何回くらい当たるのか。
それを求めるのが、 今回の期待値の計算です。
ねずみざんの期待ヒット数を計算する
期待値は、 それぞれの結果について、 「結果の値×その結果が起こる確率」 を足し合わせることで求められます。
ねずみざんの場合なら、 次のように考えます。
期待ヒット数
= 0×0.1
+ 1×0.09
+ 2×0.081
+ 3×0.0729
+ ……
+ 10×0.3486784401
これを計算すると、
5.8618940391
になります。
つまり、 ねずみざんの期待ヒット数は、 約5.86回 です。
だいたい 平均すると6回弱 当たる技だと考えられます。
「最大10回」と聞くと、 10回当たる場面を強くイメージしがちです。
しかし、 途中で外れる場合も含めて平均すると、 通常の命中90の状態では、 約5.86回になります。
通常のねずみざんは、平均すると約5.86回ヒットする。 「最大10回」と「平均約5.86回」は区別して考える必要がある。
もっと簡単に期待ヒット数を見る方法
実は、 ねずみざんの期待ヒット数は、 もう少し見通しよく考えることもできます。
1発目が当たる確率は、
0.9
です。
2発目が発生して当たるには、 1発目も2発目も当たる必要があります。
0.9²
3発目まで当たる確率は、
0.9³
です。
同じように、 10発目まで当たる確率は、
0.9¹⁰
です。
すると期待ヒット数は、
0.9 + 0.9² + 0.9³ + …… + 0.9¹⁰
と考えることもできます。
これは、 「1発目が当たる確率」 「2発目まで当たる確率」 「3発目まで当たる確率」 を足していく考え方です。
この式を計算しても、
5.8618940391
となります。
期待値の計算にはいくつかの見方がありますが、 ねずみざんの場合は、 この考え方もかなり直感的です。
期待威力にすると約117
ねずみざんは、 1回あたりの威力が20です。
期待ヒット数が約5.86回なので、 期待威力は次のように計算できます。
20 × 5.8618940391 = 117.237880782
つまり、 通常の命中90のねずみざんは、 期待値で見ると 威力約117 の技と考えることができます。
もちろん、 実際に毎回威力117のダメージが出るわけではありません。
0回で終われば、 ダメージは0です。
10回すべて当たれば、 威力200相当です。
そのいろいろな結果を平均すると、 威力約117くらいになる、 という意味です。
ここは、 期待値を考えるうえでとても大切です。
期待値で見ると、通常のねずみざんは威力約117。 ただし、実際の結果は0回から10回まで大きくブレる。
「威力200の技」と言い切ると少し危ない
ねずみざんは、 最大まで当たれば威力200相当です。
これはたしかに強力です。
しかし、 数学的には 「いつも威力200の技」 と考えるのは少し危険です。
なぜなら、 10回当たる確率は約34.9%だからです。
つまり、 10回すべて当たることは珍しすぎるわけではありませんが、 毎回期待してよいほど安定しているわけでもありません。
3回使えば1回くらいは10回当たるかもしれない。
でも、 3回使っても一度も10回当たらないことも普通にあります。
ここに、 確率のおもしろさがあります。
最大値だけを見ると、 とても派手に見えます。
しかし、 期待値を見ると、 もう少し落ち着いた評価になります。
ねずみざんの場合、 最大威力は200。
期待威力は約117。
この2つを分けて考えることが大切です。
現実の確率にたとえるとどれくらいか
確率は、 数字だけで見ると少しわかりにくいことがあります。
そこで、 ねずみざんの確率を、 身近な感覚に置き換えてみます。
10回すべて当たる確率は、 約34.9%です。
これは、 かなりざっくり言えば、 3回に1回くらい です。
つまり、 ねずみざんを使ったときに10回全部当たるのは、 「ものすごく珍しい奇跡」 というほどではありません。
ただし、 逆に言えば、 3回に2回くらいはどこかで止まる ということでもあります。
1回目で外れて0回になる確率は、 10%です。
これは、 10回に1回 です。
10回に1回と聞くと、 そこまで珍しくありません。
つまり、 ねずみざんを何度も使っていれば、 いきなり外れて0回で終わることも普通にあります。
また、 5回以下で終わる確率は、 約46.9%です。
ほぼ半分弱の確率で、 5回以下で止まります。
一方で、 6回以上当たる確率は約53.1%です。
つまり、 通常の命中90のねずみざんは、 「半分くらいの確率で6回以上当たる技」 と見ることもできます。
| 出来事 | 確率 | 感覚的な言い方 |
|---|---|---|
| 1回目で外れる | 10% | 10回に1回くらい |
| 5回以下で終わる | 約46.9% | ほぼ半分弱 |
| 6回以上当たる | 約53.1% | ほぼ半分強 |
| 10回すべて当たる | 約34.9% | だいたい3回に1回 |
こうして見ると、 ねずみざんはかなりおもしろい技です。
最大値は派手。
でも、 途中で止まるリスクもある。
期待値で見るとかなり強い。
しかし、 実際の1回1回はかなりブレる。
このように、 ねずみざんには確率と期待値の考え方が詰まっています。
こうかくレンズを持たせるとどうなるか
ここで、 もう少し発展的に考えてみます。
ねずみざんといえば、 こうかくレンズ を持たせる型を思い浮かべる人もいるかもしれません。
こうかくレンズは、 技の命中率を上げる持ち物です。
命中90の技にこうかくレンズを持たせると、 命中率は99%として考えられます。
つまり、 1回ごとの命中率が、
0.9 → 0.99
になります。
たった9%上がっただけに見えるかもしれません。
しかし、 ねずみざんではこの差がとても大きくなります。
なぜなら、 1回ごとに命中判定があるからです。
こうかくレンズ込みで、 10回すべて当たる確率は、
0.99¹⁰
です。
計算すると、
0.99¹⁰ = 約0.9044
つまり、 約90.4% です。
通常時は、 10回すべて当たる確率が約34.9%でした。
こうかくレンズを持たせると、 それが約90.4%まで上がります。
これはかなり大きな差です。
ねずみざんは1回ごとに命中判定があるため、 命中率を少し上げるだけでも、10回ヒットの確率が大きく変わる。
こうかくレンズ込みの期待値
では、 こうかくレンズ込みの期待ヒット数も計算してみます。
1回ごとの命中率を99%、 つまり0.99とすると、 期待ヒット数は、
0.99 + 0.99² + 0.99³ + …… + 0.99¹⁰
です。
これを計算すると、
約9.466
になります。
つまり、 こうかくレンズ込みのねずみざんは、 平均すると 約9.47回 当たることになります。
期待威力にすると、
20 × 9.466 = 約189.3
です。
通常時の期待威力は約117でした。
こうかくレンズ込みでは約189。
かなり大きく変わります。
| 条件 | 10回ヒットの確率 | 期待ヒット数 | 期待威力 |
|---|---|---|---|
| 通常時 | 約34.9% | 約5.86回 | 約117 |
| こうかくレンズ込み | 約90.4% | 約9.47回 | 約189 |
この差を見ると、 ねずみざんにとって命中率がどれほど大事かがよくわかります。
普通の技なら、 命中90が99になると、 「少し安心」 くらいの変化かもしれません。
しかし、ねずみざんは連続で命中判定を行うため、 その小さな差が積み重なります。
だから、 こうかくレンズの効果が非常に大きく見えるのです。
なぜ命中率の少しの差が大きくなるのか
ここで大事なのは、 かけ算 です。
1回だけなら、 命中90%と命中99%の差は9%です。
しかし、 10回連続で成功する確率になると、 それぞれを10回かけます。
通常時:0.9¹⁰ = 約34.9%
こうかくレンズ込み:0.99¹⁰ = 約90.4%
1回ごとの命中率の差は9%でも、 10回連続で考えると、 10回ヒットの確率には大きな差が出ます。
これは、 確率の勉強でもとても大切な感覚です。
小さな差でも、 何度もくり返すと、 結果に大きな違いが出ることがあります。
勉強でも、 ゲームでも、 仕事でも、 似たようなことはあります。
1回だけ見れば小さな差でも、 何回も積み重なると大きな差になる。
ねずみざんは、 それをとてもわかりやすく見せてくれる技です。
「最大値」と「期待値」を分けて考える
今回のテーマで一番大事なのは、 最大値と期待値を分けて考える ことです。
ねずみざんの最大威力は、 20×10で200です。
これは間違いではありません。
ただし、 通常時に毎回威力200として考えると、 実際の感覚とはズレます。
なぜなら、 途中で外れる可能性があるからです。
期待値で見ると、 通常時のねずみざんは威力約117。
こうかくレンズ込みなら、 威力約189。
このように、 最大値だけでなく、 平均的にどれくらいの結果になるかを見ると、 技の見え方が変わります。
これはポケモンに限った話ではありません。
たとえば、 「当たれば大きい」 という選択肢があったとします。
しかし、 その成功率が低ければ、 平均的にはそこまで強くないかもしれません。
逆に、 1回あたりの効果は少し小さくても、 成功率が高ければ、 期待値では安定して強いこともあります。
ポケモンの技選びでも、 数学の問題でも、 現実の判断でも、 期待値の考え方はかなり役に立ちます。
期待値は「保証」ではない
ただし、 期待値には注意点もあります。
期待値は、 平均的な見通しを与えてくれます。
しかし、 その値が毎回出るわけではありません。
通常のねずみざんの期待ヒット数は、 約5.86回です。
だからといって、 実際に毎回5回か6回くらい当たるとは限りません。
1回目で外れることもあります。
10回すべて当たることもあります。
期待値は、 あくまで長い目で見た平均です。
ここを間違えると、 「期待値では強いはずなのに、実際には外れた」 という感覚になってしまいます。
確率の世界では、 期待値と実際の1回の結果は別物です。
ねずみざんは、 そのことも教えてくれます。
期待値は「平均するとどうなるか」を表す値であり、 「毎回その結果になる」という保証ではない。
今回のまとめ
今回は、 イッカネズミの技 ねずみざん を題材にして、 確率と期待値を考えました。
ねずみざんは、 威力20・命中90・最大10回攻撃の技です。
ただし、 1回ごとに命中判定があり、 外れた時点で攻撃が終わります。
そのため、 「最大10回」という言葉だけで見ると、 実際の強さを少し見誤る可能性があります。
- 10回すべて当たる確率は約34.9%
- 通常時の期待ヒット数は約5.86回
- 通常時の期待威力は約117
- こうかくレンズ込みなら10回ヒットは約90.4%
- こうかくレンズ込みの期待威力は約189
最大まで当たれば、 ねずみざんは威力200相当になります。
しかし、 通常時の期待値で見ると、 平均的には威力約117の技です。
一方で、 こうかくレンズを持たせると、 期待威力は約189まで上がります。
これは、 ねずみざんが1回ごとに命中判定を行う技だからです。
1回ごとの命中率の差が、 10回連続の確率に大きく影響します。
つまり、 ねずみざんは、 ポケモンの技でありながら、 確率・期待値・連続成功の考え方を学ぶのにかなりよい題材です。
「最大でどれくらい強いか」 だけでなく、 「平均するとどれくらいか」 を見る。
この視点を持つと、 ポケモンの技も、 数学の問題も、 少し違って見えてくるはずです。