塾長ノート

a book と the book は何が違うのか

初めて出すものか、特定できるものかで冠詞を選ぶ

前回は、 a bookwater を比べながら、 数えられる名詞と数えられない名詞を整理した。

しかし、名詞の前につく小さな語には、 もう一つ大事な問題がある。

I bought a book yesterday.
私は昨日、本を一冊買いました。

The book was very interesting.
その本はとても面白かったです。

最初の文では a book だったのに、 次の文では the book になっている。

これは、 book という単語の意味が変わったからではない。 話し手と聞き手が、 その本をどのように見ているかが変わったのである。

a / an は、 まだ特定されていない一つのものを話に出すときに使う。 一方、 the は、 話し手と聞き手がどれのことか分かるものを指すときに使う。

日本語では、 「本を買った」 「その本は面白かった」 のように、 文脈で分かることが多い。 しかし英語では、 名詞の前に a を置くのか、 the を置くのかで、 その名詞の見え方を示す。

今回は、 a bookthe book の違いを入口に、 不定冠詞と定冠詞の基本を整理しよう。

a は、まだ特定されていない一つを話に出す

まず、 a / an の基本から見ていこう。

I bought a book yesterday.
私は昨日、本を一冊買いました。

この文では、 話し手は 「ある一冊の本」 を買ったことを伝えている。 しかし、聞き手はまだ、 その本がどの本なのかを知らない。

このように、 まだ特定されていない一つのものを話に出すとき、 英語では a を使う。

I saw a dog in the park.
私は公園で犬を一匹見ました。

She has a brother.
彼女には兄弟が一人います。

We need a new computer.
私たちは新しいコンピューターが一台必要です。

ここで大事なのは、 a が単に「一つ」という数だけを表しているわけではない、 という点である。

もちろん、 a book は「一冊の本」なので、 数としては一つである。 しかし、文の中での働きとしては、 まだどれか特定されていないものを、新しく話に出す という意味合いが強い。

a book
→ ある一冊の本。まだどの本かは特定されていない

a dog
→ ある一匹の犬。まだどの犬かは特定されていない

そのため、 a は、 数えられる名詞の単数形につく。

a book
a student
an apple
an old house

an は、 次に来る語の発音が母音で始まるときに使う形である。 つづりだけでなく、発音で判断する点に注意したい。

an apple
an interesting story
a university
a useful tool

universityuseful は、 つづりでは u で始まるが、 発音は「ユー」に近く、子音的に始まる。 そのため a university と言う。

冠詞は小さな語だが、 名詞が文の中でどのように扱われているのかを示す。 まずは、 a / an は、特定されていない一つを話に出す形 と押さえておこう。

the は、どれのことか特定できる名詞につく

次に、 the を見ていこう。

I bought a book yesterday.
私は昨日、本を一冊買いました。

The book was very interesting.
その本はとても面白かったです。

最初に a book と言った時点では、 その本は新しく話に出てきた本である。 しかし、二つ目の文では、 聞き手も 「さっき言った本のことだな」 と分かる。

このように、 話し手と聞き手の間で、 どれのことか特定できる名詞には the を使う。

I saw a dog in the park.
The dog was very small.

I met a girl at the station.
The girl was my classmate.

ここでは、 一度出てきた名詞をもう一度指している。 だから、二回目には the dogthe girl になる。

ただし、 the は二回目に出てきた名詞だけに使うわけではない。 初めて出てくる名詞でも、 どれのことか相手が分かるなら the を使う。

Please open the door.
ドアを開けてください。

I went to the station this morning.
私は今朝その駅へ行きました。

部屋の中で the door と言えば、 どのドアを開けるのかが状況から分かることが多い。 自分たちが普段使う駅について話しているなら、 the station も自然である。

つまり、 the の中心は、 「二回目」そのものではない。 中心にあるのは、 どれのことか特定できる という見方である。

a book
→ まだどの本か特定されていない一冊

the book
→ どの本か特定できる一冊

この違いが見えると、 冠詞はかなり整理しやすくなる。

the は、唯一のものや限定されたものにも使う

the は、 一度出てきた名詞を指すときだけでなく、 もともと一つに特定できるものにも使われる。

the sun
太陽

the moon


the sky

太陽や月は、 普通の会話ではどれのことか特定できる。 だから、 the sunthe moon と言う。

また、名詞の後ろに説明がついて、 どれのことか限定される場合にも the が使われやすい。

the book on the desk
机の上にある本

the man standing by the door
ドアのそばに立っている男性

the girl who lives next door
隣に住んでいる女の子

ここでは、 on the deskstanding by the doorwho lives next door が名詞を説明している。 その説明によって、 どの本、どの男性、どの女の子なのかが特定されている。

ただし、 説明がつけば必ず the になる、という機械的な規則ではない。 大事なのは、 その説明によって聞き手が対象を特定できるかどうかである。

I want a book about Japanese history.
私は日本史についての本が一冊ほしいです。

I want the book about Japanese history.
私はその日本史についての本がほしいです。

最初の文では、 日本史についての本なら、 まだどれでもよい感じがある。 だから a book が自然である。

二つ目の文では、 話し手と聞き手の間で、 どの本かが分かっている。 だから the book になる。

ここでも、 決め手は日本語訳ではない。 名詞が まだ特定されていないもの なのか、 特定できるもの なのかを見るのである。

冠詞は、名詞の意味ではなく名詞の見え方を示す

冠詞を学ぶとき、 「a は一つ」 「the はその」 とだけ覚えると、 途中でうまくいかなくなることがある。

なぜなら、冠詞は、 名詞の日本語訳だけで決まるものではないからである。

I need a pen.
ペンが一本必要です。

Please pass me the pen.
そのペンを取ってください。

どちらも pen という同じ名詞を使っている。 しかし、 最初の文では、 どのペンでもよい一つのペンが必要である。 二つ目の文では、 目の前にある特定のペンを指している。

つまり、 athe の違いは、 名詞そのものの意味の違いではない。 話の中で、 その名詞をどのように見せるかの違いである。

a / an
→ まだ特定されていない一つを話に出す

the
→ どれのことか特定できるものを指す

冠詞なし
→ 複数名詞や不可算名詞を一般的に言うことがある

冠詞なしの形については、 次の記事でさらに整理する。 たとえば、 I like music. のように、 不可算名詞を一般的に述べるときには、 冠詞をつけないことがある。

しかし、まず今回の段階では、 a bookthe book の違いをしっかり押さえたい。

a book は、まだどの本か特定されていない一冊の本。 the book は、どの本か特定できる本。 この違いが分かると、 冠詞は単なる暗記事項ではなく、 名詞の見え方を示す小さな標識として見えてくる。

学習塾Study+から

学習塾Study+では、冠詞を「a は一つ、the はその」と訳語だけで覚えるのではなく、 その名詞が初めて話に出るものなのか、相手も特定できるものなのかを確認します。 a book と the book の違いが見えると、英文を読むときにも書くときにも、名詞の扱いを考えやすくなります。

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