ポケモンの技「ふるいたてる」は、英語で Work Up。work upは、時間や努力をかけて感情・状態・考えなどを作り出したり、高めたりする句動詞である。
ふるいたてる → Work Up
workを「働く」、upを「上へ」と別々に訳すだけでは意味をつかみにくい。何を目的語にするか、誰をwork upするかによって、日本語訳が変わる表現である。
work upは「徐々に状態を作る」
work up somethingは、ある感情や身体の状態を、時間や活動を通して生じさせることを表す。
We worked up an appetite during the hike.
→ ハイキングをしてお腹がすきました。
She worked up the courage to speak.
→ 彼女は話す勇気を奮い起こしました。
I can't work up much enthusiasm for the plan.
→ その計画には、なかなか熱意が湧きません。
work up an appetiteでは運動によって食欲が生じ、work up the courageでは努力して勇気を奮い起こす。「すぐ与える」より、内側で少しずつ状態ができる感覚がある。
work yourself upは、悪い意味にもなる
work yourself upは、自分の感情を高ぶらせること。興奮、心配、怒りなどが強くなりすぎる場面でよく使われる。
Don't work yourself up over the test.
→ そのテストのことで、そんなに気持ちを高ぶらせないで。
技名のWork Upから「いつでも前向きに奮い立つ」とだけ覚えると、この用法を見落とす。文脈によっては「興奮する」「取り乱す」に近い。
計画や案を練り上げるwork up
仕事の文脈では、案や計画の細部を考え、形にする意味でも使われる。
The team worked up a detailed proposal.
→ チームは詳しい提案を練り上げました。
食欲、勇気、感情、計画に共通するのは、何もないところから一度に現れるのではなく、過程を通して状態や形を作るというイメージである。
encourageは、外から自信や後押しを与える
encourageは、人に自信を与えたり、何かをするよう後押ししたりする語。encourage someone to doの形がよく使われる。
Her coach encouraged her to keep trying.
→ コーチは、挑戦を続けるよう彼女を励ましました。
work upは自分の中で感情や状態を作る用法が中心になる。encourageは、別の人の言葉や行動が外から支える場面と相性がよい。
exciteは、強い感情や反応を起こす
exciteは、人をわくわくさせたり、強い感情や反応を引き起こしたりする語。
The discovery excited the students.
→ その発見は生徒たちをわくわくさせました。
興奮が行動につながることはあるが、excite自体は「やる理由を与える」とは限らない。好奇心を刺激するexcite curiosityのような使い方もある。
motivateは、行動する理由や意欲を与える
motivateは、誰かを何かをする気にさせる、または行動の理由になることを表す。
Clear goals motivate me to study.
→ 明確な目標が、私に勉強する意欲を与えます。
She was motivated by curiosity.
→ 彼女は好奇心に動かされました。
encourageは自信や支援を与えることに焦点を置きやすく、motivateは行動の理由や意欲に焦点を置きやすい。ただし、実際の場面では両方が当てはまることもある。
build upは、量や強さを少しずつ増やす
build upは、力、信頼、自信、事業などを徐々に増やし、強くすることを表す。
Regular practice builds up confidence.
→ 定期的な練習は自信を高めます。
She is building up her strength.
→ 彼女は少しずつ体力をつけています。
work upにも「高める」感覚があるが、食欲や勇気など特定の状態を生じさせる用法が目立つ。build upは、すでにある力や量を段階的に大きくする場面に広く使う。
五つの表現を比べる
work up → 努力や時間を通して感情・状態・案を作る
encourage → 自信や後押しを与える
excite → 強い感情や反応を起こす
motivate → 行動する理由や意欲を与える
build up → 力や量を徐々に増やす
すべてを「奮い立たせる」と訳せる場面があっても、誰が、何を、どのように変えるかは違う。目的語と文型を見ることが大切である。
「ふるいたてる」とWork Up
日本語の「奮い立てる」は、気力や勇気を呼び起こし、自分を行動できる状態へ持っていくことを表す。Work Upも、内側にある気持ちや身体の状態を高める意味を持つため、技の効果とよく対応する。
ただしwork upは、「勇気を奮い起こす」だけの表現ではない。食欲を生じさせる、心配で高ぶる、案を練り上げるといった用法まである。技名では、その広い意味のうち「気持ちと力を高める」部分が生きていると考えられる。
ここで述べるのは語の用法と技の働きの対応であり、名前が決められた経緯そのものを示すものではない。
ターン制作品では、攻撃と特攻が1段階ずつ上がる
ターン制のメインシリーズにおける「ふるいたてる」は、ノーマルタイプの変化技。PPは30、優先度は0で、使用者自身を対象にする。
成功すると、使用者の攻撃と特攻がそれぞれ1段階上がる。防御、特防、素早さ、命中率、回避率は上がらない。
攻撃 → 1段階上昇
特攻 → 1段階上昇
対象 → 使用者自身
能力ランクの上昇なので、通常は交代すると元へ戻り、それぞれ上限の+6を超えては上がらない。両方がすでに上限なら技は失敗し、片方だけが上限なら、もう片方だけが上がる。
攻撃と特攻を同時に高める理由
攻撃は物理技、特攻は特殊技のダメージに関わる。「ふるいたてる」は両方を同時に上げるため、物理技と特殊技の両方を使う構成でも働く。
ただし、どちらか一方しか使わないポケモンでは、使わない側の上昇は直接の利益にならない。「二つ上がる」ことと「どんなポケモンでも二倍得をする」ことは同じではない。
現行作品では、収録状況とバトル方式を分ける
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』には技の説明データがあるが、通常の習得手段は設定されていない。そのため、ターン制の効果を説明できても、同作で一般的に覚えさせて使える技として扱わないよう注意が必要である。
現在の『Pokémon LEGENDS Z-A』では、TM103として使用できる。リアルタイムバトルでは攻撃と特攻を12秒間高め、プラス技では15秒間高める。クールダウンは15秒である。
ZAの「一定時間上昇」と、従来のターン制作品の「1段階上昇」は別の仕組みである。現在の仕様を述べるときは、どの作品について話しているかを明確にしたい。
世代差
「ふるいたてる」は第5世代で登場し、ターン制作品では一貫して攻撃と特攻を1段階ずつ上げる。第5世代ではTM83、第7世代ではTM01、『ソード・シールド』ではTR85、『ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』ではTM10だった。
第7世代でZ「ふるいたてる」として使うと、通常の効果に加えて攻撃がさらに1段階上がるため、合計では攻撃が2段階、特攻が1段階上がった。
作品ごとに入手方法や利用可否は変わってきたが、ターン制での基本効果そのものを「攻撃か特攻のどちらかがランダムに上がる」と説明するのは誤りである。
まとめ
work upは、努力や時間を通して感情、身体の状態、考えなどを生じさせたり、形にしたりする句動詞。目的語や形によって「勇気を奮い起こす」「食欲が出る」「感情を高ぶらせる」「案を練る」と意味が変わる。
work up the courage → 勇気を奮い起こす
work up an appetite → 食欲が出る
work yourself up → 感情を高ぶらせる
work up a proposal → 提案を練り上げる
「ふるいたてる / Work Up」は、ターン制作品では使用者の攻撃と特攻を1段階ずつ上げる。『Pokémon LEGENDS Z-A』では同じ二つの能力を一定時間高める。日本語名と英語名は、自分の内側に力や気持ちを作り出すという点でつながっている。
